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3

一体どこに連れて行かれるんだろう。

アレク王とはコンパスが違うのでこけそうになりながらも必死に歩いてついて行く。とある部屋に着くと、アレク王は乱暴に荘司を中に投げ入れる。かと思うと王は荘司の服を全てはいであっという間に素っ裸にした。そして、荘司をまるで荷物か何かのように抱えたかと思うと、部屋にあるもう一つの扉を開けて中に向かって投げ入れる。

「うわあ…!」

ばっしゃああん!

荘司は思っていた痛みではなく、温かいお湯の中に投げ入れられてびっくりして思い切りお湯を飲んでしまった。がぼがぼと慌ててもがきあがり、げほげほとむせる。

「なにすんだ…!」

文句を言おうと投げ入れられた方を見上げると、そこには荘司と同じく一糸まとわぬ姿になって立つアレク王がいた。
均整のとれたその体は同じ男とは思えないほど美しく、荘司は思わず真っ赤になって俯いた。
アレク王はにやりと笑ったかと思うと荘司のいる湯の中に入ってきた。ざぶざぶと近づくアレク王に荘司は少しづつ下がる。

「逃げなくともよい。なにもしない。湯あみを共にするだけだ」

言われて荘司はきょろきょろと周りを見渡した。どうやらここは風呂場らしい。にしても、ものすごく広い。大理石のようなもので作られており、女神の持つ傾けた水瓶から絶えることなくすんだお湯が湯船に流れている。天井には満天の星空が描かれ、荘司は思わずぽかんと口を開けた。
上を見るために仰け反らせていた喉をつい、と撫でられ驚いて飛び後ずさる。が、それは叶わなかった。いつの間にそんな近くにきたのか、王が間近にいて荘司の腰をしっかりと抱き込んでいたのだ。

「な、に、してんの…」

当たってんだけど、思いっきり!


密着している互いの股間に荘司は真っ赤になる。胸を押して逃れようとするもびくともしない。

「よいか、今このときよりこの体を何人たりとも触れさせることはならん。」

もう片方の手で、体中のあざをつい、と撫でながら怒りの篭もった目でそのあざを見つめた。

「このように汚らしい体にされて…!いつもそうだと?絶対に許さん…!」

アレク王の怒りに、先ほど謁見の間で言われたことを思い出す。

あれは、俺をバカにして言った言葉じゃなかったのか…?なんであいつらにやられた怪我をこの人が怒るんだ…

わけがわからないままにアレク王を見つめていると、アレク王は荘司を湯から抱き上げて側の洗い場の椅子に座らせた。そして、丹念に荘司の体を洗いだす。

「や、やめろ!」
「だめだ。この体は私のものだ。お前は放っておくと適当にしか洗わないだろう。例えお前でもぞんざいに扱うことは許さん。」
「な…」
「怪我も上がってから私が手当をする。ああ、それから美しいお前に相応しい召し物も用意させよう。よいか。この先あのような者たちと共にいることは許さん。お前は私と共に暮らすのだ」

アレク王の言葉に荘司は自分の耳を疑った。
何を言ってるんだこいつは。共に暮らす?誰と誰が?いやそれよりも、

「美しいって、何が?」
「お前の事に決まっている。聞こえなかったのか?」

何をとぼけたことを、とでもいうようにさらりと答えたアレク王に荘司はますます混乱した。

「…何言ってんだよ。俺なんかのどこが美しいって?あんた目がおかしいんじゃないの?美しいってのはあいつみたいなやつのこと言うんだよ」

あんたらの大事な神子様みたいなな、と自虐的に笑う荘司をアレク王がそのうでに抱き寄せた。

「なにすっ…!」

そして、そのまま無理やり口づける。執拗に口内で舌をむさぼられ、ようやく解放された時には荘司は酸欠のためくたりと力なくアレク王にもたれかかっていた。

「…神子など知らぬ。私の目は初めてお前を目にした時よりお前しか映さない。お前の全てが、私を捕えて離さなかったのだ。ショージ。この狂おしい胸の疼きがお前にはわかるまい。できることならこの胸を切り裂き、どれほどお前で溢れているか見せてやれればよいのに…」

とても辛そうに、真剣なまなざしで見つめられて荘司は自分の胸が激しく高鳴るのを感じた。
知らない。自分は今まで誰にも好かれることなどなかった。こんな風に思われることなどなかったのだ。だから、どうしていいのかわからなかった。

「…いいのかよ。神子と結ばれないと、あんたの世界が困るんじゃないの」

この世界の王が神子と結ばれることにより神の祝福を受けると言うなら、王が他の奴を選んではいけないんじゃないのか。

「私は世界よりもお前が欲しい」

迷うことなく告げられた言葉に荘司は目を見開く。
この目の前の男は、世界中の全てよりも荘司を選ぶと言うのだ。一切の嘘偽りのないその眼差しを向けられ、荘司は胸が張り裂けそうに痛んだ。

今まで、誰一人として荘司を選んでくれるものなどいなかった。荘司の周りにいるものは皆、幸が一番であると荘司から離れて行った。

「…いいよ」

アレク王の首に腕を回して、荘司がつぶやく。

実の親でさえくれなかった愛を、あんたがくれると言うのなら。例えひと時の嘘でも、あいつじゃなくて俺を選んでくれるなら。

「やるよ、あんたに。俺の全てをくれてやる」

荘司の言葉に、アレク王は口角を上げて笑うとその口で荘司の唇を塞いだ。

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