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「な、なにするのよ!」
突然の恵人の行動に、信じられない、と丸川が憤慨して恵人を睨む。恵人は、奪い返したエプロンをぎゅっと胸に抱いて震えていた。
「…だめ。だめです…!こ、これは、僕の。聖さんが、僕につけてほしいって、買ってくれたエプロンだもん!…う、…っく…」
恵人はぽろぽろと涙をこぼして誰にも渡さない、と言うように首を振った。
「な、なに言ってるのよ!そんなふりふりのエプロン、あなたがつけてもおかしいだけでしょ!?なにでたらめ言って…」
「でたらめなんかじゃねえ」
聖が、いつのまにやら二人の傍に来ていた。
「聖、さ…」
聖は腕を伸ばし、涙を流す恵人を抱きしめる。その抱擁に、恵人は余計に涙を溢れさせた。
「…人が動けないのをいいことに好き勝手なことしやがって…。誰が貴様に看病を頼んだ。ここに入ってもいいと言った。ここは、俺と恵人の愛の巣なんだ。他人が土足で入りこんでくるんじゃねえよ!」
恵人を抱きしめながら、丸川に向かって聖が怒鳴る。丸川は驚いて目を見開いた。
「しゃ、社長、何を…。そ、その子は、ただの従兄弟なんでしょう?」
「恵人に何かあっちゃ困るからそう言ってただけだ。恵人は俺の愛する妻だ。貴様のようなくそ女なんざ足元にも及ばねえほどよくできた嫁だ。よくも、人の奥さん泣かせやがって…!貴様は今日この場限りで解雇だ。貴様の父親の会社とも取引は打ち切りだ。わかったらさっさと出て行け。その小汚ねえツラぐちゃぐちゃにされてえか。」
普段のクールな聖からは想像もできないほど恐ろしい脅し文句とオーラに、丸川は慌てて部屋から出て行った。
「恵人…」
二人きりになり、聖はエプロンを抱きしめたまま離さない恵人を横抱きにして寝室へと連れ込んだ。ベッドに横たえ、顔中にキスを降らす。
「すまない。嫌な思いをさせたね。俺がだらしないばっかりに…」
熱で苦しいだろうに、恵人を気遣う聖に胸がぎゅっとなる。
「ご、めんなさい…。聖さん、ごめんなさい。僕、僕が、しっかりしてなかったから…」
泣きながら謝罪する恵人に優しくキスをする。
「恵人。お前は悪くない。妻を守るのは夫の役目だ。…しっかり守れなくてごめん…。
…それ、こないだのエプロンだよな?守ってくれたんだな、嬉しいよ。」
丸川に取られそうになったのは、半年記念で聖に頼まれ裸エプロンをしたときのエプロンだった。恵人は真っ赤になって、エプロンをぎゅっと握りしめる。
「…恵人…」
恵人の頬に優しく手を添え、聖がその首筋に顔を埋めて手を服の裾から忍ばせてきた。
「だ、だめ!聖さん、ね、熱があるのに…!」
恵人が慌てて腕をつかむ。だが、聖はおかまいなしに脇腹を撫でまわし、上へ上へと手を進め恵人の胸の粒を指で弾いた。
「や…!」
「汗かくといいんだって。ね、恵人。奥さんでしょ?旦那様の熱を下げるのに、お手伝いして。ね?」
ほ、ほんとかな。
若干疑いの眼差しを向ける恵人に、聖はにこりと微笑んだ。
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