12
「りょおへえええええ」
あの後、王子様はぼくを部屋に送ってくれた。
部屋に帰ると、良平がうんざりした顔でリビングのソファに座り、腰に抱きついて泣き叫んでいる人の頭をよしよしと撫でていた。
このひと、知ってる。良平の王子様の、隣に住んでるお兄ちゃんだ。
確か大学生だったよね、なんでいるの?
「兄弟なんだよ」
「えっ!?」
王子様が、向かいのソファにぼくと腰掛けながら言った。
「哲平は知らないよね。この人たちが越してきたのは二年前だし、その時雅史はもうこの学校の寮に行ってたし。」
「ご、ごの学校にいぐっで聞いたどぎ、すごくすごくイヤだったけど、雅史がいるから大丈夫って泣く泣く許しだのにぃぃぃ!
なんで危ない目に合っでるのおぉ、うああああん!りょおへえ、もう転校してえ!いや、やっぱだめ!学校辞めて俺のとこに嫁に来てええ!」
ずびずび鼻水を垂らしながら泣き叫ぶ良平の王子様。
「うるさいよ雅隆。危ない目って、ちゃんと事前に雅史と打ち合わせもしてたし話だって雅隆にしてたでしょ?
学校は辞めない。嫁には高校を出てから行ってやるって言ったはずだけど。僕を信用してないの?ああ、信用してないからわざわざ大学休んでまでここに忍び込んだってわけだね。
じゃあ婚約解消ってことで「ごめんなさいごめんなさい信用してますただ俺が会いたかっただけです許してください」
ものすごい勢いで土下座した。
あああ、お兄ちゃんも良平女王に逆らえないんだね。ぼくと一緒だ。なんだか親近感。
「それで、そっちは収まるところに収まったみたいだね。哲平がこの学校で王子様を見つけたって言って、それがお前だったのには心底びっくりしたけど」
良平がにっこり笑ってこっちを見る。
あ、だから王子様は良平がいるときは来なかったんだ。お兄ちゃんと良平が付き合ってるから、気を使ってたのか。
「哲平を頼むよ?泣かせたりしたら承知しないから」
「大丈夫。何があっても絶対守るし泣かせないよ。」
王子様の言葉に、真っ赤になって下を向く。
「所でそれはいつまで続けるの?かなりキモいんだけど」
「学園ではこっちの方が何かと便利なんだよ。それに、僕は哲平の王子様だからね。今はまだ理想を壊したくないかな?」
理想?王子様は、いつもぼくの理想だよ?
話がわからなくて、ことりと首を傾げる。
「…ま、そのうちおいおい…な。喰うの我慢すんのも、限界あるしね」
「言っとくけど哲平はまだまだお子ちゃまなんだからね」
ひどいや、良平。ぼく、お子ちゃまじゃないもん。
ぷくりと膨れると、膨れたほっぺに王子様がキスをした。
「…今は、これで充分だよ。なんたって、かわいいお姫様を手に入れたんだからね。」
にっこり微笑む王子様。
「ぼ、ぼくも、王子様がぼくの王子様になってくれてうれしい!」
そう言うと、王子様は優しく頭を撫でてくれた。
「おうじさま、大好き」
ふにゃりと笑い、首に抱きつく。
「…早くオトナになってくれよ」
王子様が、にやりと笑って呟いていたなんてぼくは知らない。
end
→あとがき
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