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5

それだけではない。ピアスは全て外され、シャツはズボンの中にいれ、腰までずらされていたはずのズボンはきちんとウエストまで上げられている。ネクタイもきちっと締められ、その出で立ちは優等生のようだ。

「…せんせ、今までごめんね?俺、今日から真面目になる。ちゃんとする。タバコも辞めるし、授業もサボらないよ。遅刻したりもしないし、だから、だからっ…」

そこまで言って、笹山はじわりと涙を浮かべたかと思うとぼろぼろと泣き出した。

「ひっく…、…も、遅いかなぁ…?…っく、う…っ、お、おれ、理事長に、ヒック、…言ってくる、から…。
ま、真面目になります、から、…ひっ…、せんせ、辞めさせないでって…」
「まてまて、なんの話だ?え?」

神崎が慌てて立ち上がり、ハンカチで笹山の涙を拭く。

「だって…、せんせ、辞めさせられるんでしょ…!?お、俺を、更生できなかった責任、取らされるんでしょ…!?や、やだよ。ヤダヤダ!せんせがいなくなるの、やだあ!ごめんなさい、ごめんなさい先生!もう困らせないから、悪いこともうしないからあ…!
行かないで、どこにも行かないでよぉ…!」

涙を流し、いやいやと首を振る笹山の頬にそっと触れたかと思うと神崎はぺろりと笹山の流す涙を舐めた。
いきなりの行動に、笹山がぴたりと動きを止め、真っ赤になったかと思うとぱくぱくと口を開閉した。

「あのな、何を勘違いしてるか知らないが俺は辞めさせられたりしないぞ?」

神崎の言葉に、笹山は目をぱちくりとさせる。

「え…、じゃ、がっこ、辞めるの、嘘…?」
「いや、それなんだが…。辞めるのは、嘘じゃない。」

困ったように眉を下げて答えられた言葉に、笹山はひゅっと息をのんだ。

「う、え…っ!」
「まっ、まてまて、泣くな!」
「だ、て…!せんせ、いなくな…っ、うえ…っ!」

神崎が辞める。その決定を聞かされた笹山は涙腺が崩壊したかのようにぼろぼろと涙をこぼした。神崎がいくらなだめようと、いやいやと首を振りその涙は止まらない。

「せんせ、辞めさせられんじゃなくても、辞めるんだ…!や、ぱ、俺の、俺のせい、で…」
「…まあ、ある意味お前のせいではある」

ため息とともに告げられた言葉。笹山の胸に鋭い棘が突き刺さるかのようだった。

「…っ!ご、め…!ごめ、なさ…!ぅっ…、ゆる、して…!嫌い、な、んない、でぇ…!」
「笹山」
「好き…!好き、せんせが好きなんだよぅ…!今まで、ごめ、…許して、おねがっ…、ん…!」

泣きじゃくり謝り続け、とうとう秘めていた思いを口にした笹山に、神崎が口づけた。

「んう…!」

深く、甘い口づけに息をするのを忘れくらくらとしてしまう。ようやく解放された時、笹山は酸欠状態で神崎の胸に倒れこんでしまった。
荒い息を整える笹山を、神崎が優しく抱きしめ背中を撫でる。

せんせ…、どして?お別れのキス?

「…ったく、お前はほんとに俺を困らせるのが得意だな。」

びくりと体を竦ませた笹山に、また軽く口づける。

「…俺が辞めるのはあれだ。その…、お前が、好きだからだ。」

顔をそらして真っ赤になって口元を押さえる神崎に、笹山はこてんと首を傾げた。
…俺が、好きだから?

「…辞める、ってか、新しい職場に行くんだよ。前からずっと誘われてたんだ。わかる?」

こくこくと頷くと、神崎は笹山の頭を撫でて言葉を続けた。

「こないだ、中庭で眠ってるお前見つけたんだ。その時の事、覚えてるか?お前、半分寝ぼけながら俺と会話したんだぞ。」

会話…。もしかして…

「…その時に、お前が言ったんだ。『先生が好きで困らせた。気に留めて欲しかった。俺だけを見て』ってな。」

笹山の顔が一気に朱に染まる。夢だと思っていた。まさか、本人と会話してたなんて…!
どうしよう。穴があったら入りたい。絶対に、言うつもりなんてなかったのに。
そこまで考えて、ふと思う。…ああ、だから。俺の気持ちに気付いて、困って先生は学校辞めちゃうんだ…

「…とか思ってないだろうな?」
「なんで!?」

心の中を読まれ、びっくりして顔を上げた。

「あ」

その時に、見てしまった。神崎の、自分を見つめるその目。愛しいって、好きだって言ってくれてる。

「さっきも言ったが、俺が異動するのはお前が好きだからだ。…同じ学校で、生徒に手を出すわけにはいかないだろう。下手すりゃお前も処分を受ける。
笹山、好きだ。お前の告白であっちゅうまに落とされちまった。前々から気にはなってたんだ。俺を困らせるこのいたずらっ子が。更生させようと追いかけるうちに、お前とのやり取りが楽しくて…。」

神崎はまた笹山の頬にキスをした。

「中庭でのお前はほんとにかわいかった。好きだ。笹山、恋人になれ。」

夢にまで見た言葉に、笹山はまた涙があふれた。

「せんせ、好き…!好きぃ…!」

夢の中だと思っていたあの時のように、笹山は神崎の首に手を回した。


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