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笹山は、神崎の夢を見た。いつものように困った顔をして自分の頭を撫でている。
『なあ、笹山。なんでお前はいつも俺を困らせるんだ?』
ごめんね先生。だってだって、好きなんだもん。
『…好き?』
うん。俺、先生が好きなの。大好きなの。知らなかったでしょ?気付かなかったでしょ?えへへ、アカデミー賞もんだね。
『好きならなんで困らせるんだよ』
だって、そうでもしないと先生は俺なんて見てもくれないでしょ?気にも留めてくれないでしょ?…俺、ほんとは告白するつもりだった。好きって言って、玉砕してせんせのことすっぱり諦めるつもりだった。でもさ、初めて指導室でせんせと向かい合ったときにさ。せんせ、俺の顔に触れてくれたじゃん。じっと見つめてくれたじゃん。
俺ね、欲が出ちゃった。
告白して、二度と触ってもらえなくなるくらいなら、二度とその目に映してもらえなくなるくらいなら。問題児としてでも、先生に触れてほしかった。見つめててほしかった。…名前を、呼んでほしかった…
『笹山…』
ごめんね?せんせ、ごめんね、許してね?
『…そんなに俺が好きか』
好き。大好き。好きだよ、せんせ。俺を見て。俺だけを見つめてよ…
夢の中で、神崎はとても優しく微笑んで好きだと繰り返す笹山をぎゅっと抱きしめた。
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