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2

指導室の扉を開けると、椅子に座り机に向かって書類を書き上げている先生がいた。夕日を浴びてキラキラと光る先生が、眩しくて。笹山は声を掛けるのも忘れてうっとりと見つめてしまった。

「お、来たか。まあそこに座れ」

笹山に気付いた神崎がペンを止め、向かいの椅子に座るように声を掛ける。笹山はドキドキしながら椅子に腰かけた。

「あのな、話ってのはお前のその服装の事だ。それから、普段の素行。お前、不良って呼ばれてるんだぞ。知ってるか?」
「し、知ってるよ。でも、これくらいみんなやってるじゃん。」

じっと見られて赤くなる顔をばれない様にふい、とそっぽを向く。

せんせ、じっと見ないでよ。まともに見らんないよ。

「あのなあ」

所が、そんな笹山の心情を知ってか知らずか、神崎はそっぽを向いた笹山の顔を掴んで無理やり自分の方へ向けた。

「…!」
「みんながやってるからってやっていい、ってわけじゃないだろ?せっかく頭がいいのに、もったいないだろ。な?ちゃんとしろ。」

頬を挟まれたまま見つめあう形で、優しく諭される。笹山はまるで女でも口説くかのような神崎の甘い声にうっとりとしてしまった。

「笹山…?」

何も返事をしない笹山に、神崎が不思議そうに首を傾げる。
笹山は、ハッとした後自分の頬を掴む神崎の手を振り払った。そして、椅子から立ち上がり指導室の扉へと走り出す。

「っ、笹山!」

神崎が大声で制止をしようと笹山の名を呼ぶと、笹山はくるりと振り返り、にこりと笑った。そして、神崎にべーっと舌を出した。

「やぁだよー!俺は今の自分が気に入ってるんだもん!じゃあね〜!」
「まて、笹山!」

呼び止める神崎を無視して、指導室から飛び出す。

笹山は走りながら、笑っていた。先生。先生に、触れてもらえた。あんな近くで、俺の名前を呼んでくれた。
告白をして、玉砕するつもりだった。でも、俺がこのまんまだったなら。先生は、俺を気にかけてくれる。俺に声を掛けてくれる。俺に触れてくれるんだ。


初めて触れてもらえた日の事を思い出しながら、ゲンコツを落とされた頭を撫でる。

でも、俺の選択はきっと間違ってる。俺がしてることはただのガキのわがままに他ならない。
『お前は問題を起こす生徒で、俺はそれを指導する教師だ。それ以外何がある』
神崎の言葉を思い出してぎゅっと目を閉じる。
…いいんだ。俺のこの思いは、きっと不毛な片思いってやつでしかない。向こうが気付いてハッピーエンドなんて少女漫画の世界でしかない。

それならば、今のまま。触れてくれるたびに、先生も俺を好き?と妄想できるままいさせてほしい。


笹山はそのままうとうとと眠りについた。


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