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7

翌日、慶一は花田を誰もいない学舎裏に呼び出して携帯を差し出す。


差し出された己の携帯を、花田は怪訝な顔で見つめた。

「画像は消去させてもらったけど、他は何もしてないから。」

携帯と慶一を交互に見た後、恐る恐る手を伸ばして携帯を受け取る。

「確かに返したから。じゃあね」

そう言って立ち去ろうとした慶一は、途中でぴたりと歩みを止めて、あ、そうそうと振り返った。

「あのさ、いきなり翔也に話しかけるのやめたりしないでね?」


花田は慶一の言葉に眉を寄せた。普通、自分を脅して犯そうとした奴なんか恋人のそばに寄らせたくないだろう。

「皆にも昨日のことは一切翔也に言わないように言ってあるし。
…翔也はね、お人好しだから君を少しも疑いもしないで純粋に友達だと思ってるんだよね。だからさ、君が翔也を無視したりすると翔也が悲しむと思うんだよね。」

だから、友達でいてね?と微笑む慶一の目は笑っていなかった。その微笑みに花田は心底怯えたが、また魅了されもした。と同時に、自分はきっとこの男には一生逆らうことはできないと悟った。



翌日、花田は翔也と共に食堂にいた。目の前で食事をする平凡な青年を花田はじっと見つめる。

「どしたの?」
「…いや、お前ってすごいんだなあと思ってね…」

何言ってんの、と笑う翔也の裏表のない笑顔に癒される。そうか。だから、慶一は。
慶一が翔也の執着する理由を何となく理解する。そして、花田自身もそんな二人を面白いと思った。

「翔也」

談笑する二人の後ろから、慶一が現れ翔也の隣に座る。とたんに嬉しそうに笑う翔也。

「知らぬが仏…ってか。」


ぽつりとつぶやく花田を、慶一がぎらりと睨んだ。途端に花田は冷水を浴びせられたかのように体を震わせる。


慶一には逆らうな。翔也には、余計なことは吹き込むな。


こうしてまたこの大学でも、静かに暗黙のルールが出来上がっていくのであった。


end
→あとがき


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