×
人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -




3

「ねえ、慶一ちゃんあの平凡くんと付き合ってんの?」
「え…、な、なんで…」

ニヤニヤと笑いながら片手でくるくると慶一の髪をいじる。慶一は知らぬふりをしてとぼけたが、花田はその顔を愉快そうに歪めた。

「こないだ、たまたま通りかかったマンションの前でさあ、見ちゃったんだよねえ。二人がキスしてるの。ほら、よく撮れてるでしょ?」

髪を弄っていた手に携帯を持ち、写メを見せてくる。そこには確かに翔也とキスをする自分が写っていた。

「これさ、大学のホムペに流されたら困るよね?」

携帯をしまい、今度は慶一の頬を撫でる。

「…何がしたいの?」
「簡単だよ。慶一ちゃんを抱かせてくんない?ちなみに拒否ったらどうなるかわかるよね?」

いやらしく顔を歪めながら慶一の首筋に指を這わせた。俯く慶一の態度にひどく征服欲と優越感を感じ、キスをしようと泣きそうになっているであろう顔をそっと覗き込んで花田はその顔から笑みを消した。

――――――慶一は、その口に妖艶な笑みを浮かべていた。

そして、花田の両手を取り自分のシャツの胸元と軽くつかませる。その笑みに花田はごくりとつばを飲み込んだ。

「バカな男」

そう言うなり、慶一は掴ませた両手を強く握り自分のシャツを思い切り左右に開いた。
ボタンが飛び散り、白い胸板が露わになる。
花田は何が起こったのか理解できず慶一のシャツを掴んで開いたまま固まってしまった。

「いやだあっ、お願い、やめてえ!許してえ!!」

慶一が突然大声を上げると同時に講義室の扉ががらりと開いた。そこには、同じ講義を受けている幾人かの生徒がいた。

「な、何やってんだ、花田!離せっ!」

その言葉に花田は自分の置かれている状況に気付く。花田が手を離す前に一人の生徒が花田を慶一から引き離し、他の生徒が慶一を取り囲んだ。慶一は真っ赤になって涙を流し、シャツを掴み胸板を隠す。

「花田、お前最低だな!高槻に何しようとしてたんだ!」
「ち、違う!これはこいつが勝手に…」

花田は必死に言い訳しようとするも、状況について行けずしどろもどろと口ごもる。

「高槻、大丈夫か?」
「う、っく…、け、携帯…。花田君、携帯で…ぼくの、僕の裸をっ…」

泣きながら訴えた慶一の言葉に皆が一斉に花田を見る。花田はさっと顔を青くした。
―――――やられた!

「花田、ほんとに最低だな。携帯を高槻に渡せ。」
「そ、そんなもん撮ってねえよ!俺が撮ったのは…」
「撮ったのはなんだ?言っとくがそんなもん見せようとするなよ!高槻を晒し者にするつもりか!早く渡せ!」

慶一と翔也のキスシーンを見せようと携帯を取り出した瞬間、あっという間に取り上げられ慶一に渡された。慶一は泣きながら花田の携帯を握りしめる。

「ちくしょう!このホモやろう!よくも嵌めやがったな!」
「ホモ野郎はお前だろ!無理やり高槻を襲っといて何言ってやがる!」
「高槻、大丈夫か?おい、誰か送ってやれ!」

何人かの生徒に守られるように肩を抱かれながら慶一が講義室の入り口に向かう。
花田は残りの生徒に取り押さえられ、身動きが取れない。

「あいつはなあ、児玉とできてんだ!あいつこそホモで最低な奴なんだよ!」
「嘘つけ!児玉と高槻は高校のころからのダチなんだ、お前と一緒にするな!」
「くそう!高槻、覚えて…っ」

嵌められた怒りから、慶一に復讐するつもりで覚えてろ、と吐き捨てようとして花田は退室しようとする慶一を見てその言葉を止め息をのんだ。



慶一の目が、明らかな狂気を含んで花田を捕えていた。



「あ…」


慶一のその目に、花田は抵抗をやめがくりとその場に膝を落とす。その様子を横目に、慶一は口元をわずかに歪め講義室から出て行った。



[ 353/459 ]

[*prev] [next#]
[mokuji]
[しおりを挟む]


top