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2

二人は同じ大学に通っている。だが、一応恋人であることは秘密だ。

慶一としては悪い虫が付かないように公言して回りたいところだが、自分の見た目を知っている。恐らく、二人の関係を知られたとしたらからかわれ何かされるのは翔也だろう。
それで人間不信になって、慶一しかいらないと言わせ引きこもりになってくれるのも慶一としては大歓迎なのだが、慶一は誰に対しても分け隔てなく優しく、頼られる翔也を見るのが好きなのだ。

「惚れた弱みってやつだよね」
「なにが?」


並んで講義を受ける翔也が慶一の呟きに首を傾げ問いかける。


「ううん、なにも。」


何かあれば全力で敵を排除すればいい。

そんなことを考えてうっすらと口元に笑みを浮かべる慶一に、講義を受ける教室の皆が頬を染めていた。


そんなある日、順調にキャンパスライフを過ごす二人に、たまたま講義の席で隣になった男が声をかけてきた。

「俺、花田カオル。よろしくね?ねね、二人いつも一緒にいるよね。仲いいの?」

チャラチャラとした見た目で、いかにも軽薄そうな男に慶一は内心眉を寄せた。だが、根っからのお人好しの翔也はにこりと微笑み律儀に挨拶を返す。

「俺は児玉翔也、よろしく。こっちは高槻慶一だよ。俺たちは高校から一緒だったんだ」
「へえ〜、そっちは慶一ちゃんっていうんだあ。高校から?うらやましーねー。慶一ちゃんは高校からそんなかわいかったの?」

翔也に話を振りながら聞いてくるのは全て慶一に関する事ばかり。

…こいつ、僕狙いか。

お人よしの翔也は花田の真意に全く気付くことなく普通に話をしている。花田の目がいやらしくねっとりと慶一に絡みついているのに気付きながら、慶一はいつものようににこやかに恥じらうように相槌を打っていた。

その日から花田はよく二人に絡んでくるようになった。そして、二人に話をするふりをしながらじりじりといつのまにか翔也と慶一の間に入り、二人を引き離す。幾日かそんな日が続いたある日、慶一は翔也に『教授に呼ばれているから』と嘘をついて一人誰もいない講義室に残っていた。

「あれ〜?慶一ちゃん、一人?珍しいね」

がらりと講義室の扉を開けて、花田が現れた。へらへらと笑いながら慶一に近づく。

「教授に呼ばれて…花田君こそどうしたの?」
「ん〜?ちょっとね、忘れ物?」

ニヤニヤと笑いながら慶一の前に立ち、ゆっくりと近づいてくる。慶一はそれに合わせて一歩一歩下がり、とうとう後ろの壁に背中をついた。花田が、慶一を閉じ込める形で慶一の顔の両脇に手を突く。

「は、花田くん…?」

慶一が怯えたように花田を上目づかいで見た。

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