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4

「は、袴田先生…?」

後ろから抱きしめたまま、肩口に頭を乗せて離さない。久しぶりの袴田の香りに、修吾は胸がとくとくと高鳴った。目の前でにやにやと笑う月村に気付き、慌てて離れようと身を捩る。

「は、袴田先生!離してくださいっ!冗談にもほどが…」
「あらあら袴田先生、離せだって。かわいそ〜。せっかく一生懸命家の事やって待ってたのにね〜。」
「…うるせえ」

月村のからかいにぶすっとした声で返す袴田。二人のやり取りに修吾は首を傾げた。

家の事をやって待ってた…?袴田先生が?

「先輩、先生に出張の事言わずに行っちゃったでしょ?ここに来た私を見て袴田先生、すごくびっくりしてたんですよ。『あいつはどうした!まさか、俺が家の事何もできないから嫌になって辞めたのか!』って。いいチャンスだと思って、言ってやったんです。先生が家の事できる様になったら戻ってきてくれるかもしれないですよって」

なに、どういうこと?家政婦がいなくなって困ったってこと?
困惑する修吾を抱きしめたまま袴田が舌打ちをする。月村はそんな袴田を意にも介さずとんでもないことを口にした。

「今の時代、家事一つできない旦那はいつ捨てられてもおかしくないんですからねって。そしたら、やり方教えろって。お皿も何枚か割ったりしたけど、見てください。ここまできれいにできるようになったんです!すごいでしょ?ま、ほとんど私がしたんですけど。愛の力ってすごいですよね!」

きゃっきゃと笑う月村に袴田がまた舌打ちをした。

「お前、もう帰れ」
「はいは〜い、お邪魔虫は帰りますよーうだ。じゃ、先輩。あとはよろしく〜!」

抱きしめられたまま固まる修吾の横を笑いながら通り過ぎて、月村が部屋を出て行った。修吾は、月村の言葉を理解するのに必死だった。

えと、旦那って、先生にとって俺は家政婦代わりで、それで…

「修吾」

混乱する中名前を呼ばれ、びくりと体を跳ねさせた。恐る恐る首だけを後ろに向ける。

「あ…」

自分を見つめる袴田の目が、なんだか熱っぽい。
どうして。どうして、そんな目で自分を見つめるのか。やめてほしい。勘違い、してしまいそうになる…

自分を見つめる袴田の目に耐えきれなくて俯こうとしたら顎を掬われ無理やり袴田の方へ顔を向けられる。

「せ、せん、、…ん…」

袴田の顔が近づいたかと思うと、温かい唇が自分のそれに重ねられた。

「ん、ん…」

舌で唇をこじ開けられ、ぬるりと侵入する袴田の熱に口内を思うさま嬲られる。ちゅ、と軽いリップ音とともにその口が解放された時、修吾はもう自分では立っていられなくてその場にがくりと膝を落とした。
崩れ落ちる修吾に合わせ自分もしゃがみこみ、覆いかぶさるように抱きしめて顔や首など至る所にキスを落としてくる。


なに、これ。知らない。こんな先生、知らない。こんな優しく、まるで大切な恋人のように自分を扱う先生なんて、俺は知らない。


真っ赤な顔でキスを受けながら、修吾はますます混乱した。

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