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そんなある日、夜に何やら人の話し声が聞こえてふと目が覚めた。どうやら隣の部屋でアルベルトが誰かと電話をしているらしい。
ベッドから抜け出してそっと扉に耳を付ける。
「ああ、そうだ。ウエディングドレスはもうできたか?ふふ、似合うだろうな。ああ、わかってる。一生大事にするよ。愛してるんだ」
聞こえてきた内容に、弾かれた様に扉から離れベッドにもぐりこむ。
そう言えば初めてあいつに犯された時、
『花嫁を連れて帰る』
とか言ってたっけ。なんだ、そうか。やけにすっきりした頭で、咄嗟に思い立つ。
「逃げよう。」
アルベルトはまだ戻ってくる気配がない。俺は再びベッドから抜け出し、シーツをロープ代わりにして寝室から抜け出した。
アルベルトの元から逃げ出した俺は暗い道を歩きながらない頭で必死に考えていた。
ええと、確かどの国にもたいしかんとかいうのがあるんじゃなかったっけ。そこに行けば日本に帰してくれるかな。…ところでその肝心のたいしかんとやらはどこにあるんだ。
ふと顔を上げた先に、パトカーらしきものが止まっていた。おおっ、国は違えどパトカーは似たようなもんなんだ!喜んで駆け寄る。
「え、えくすきゅーずみー」
頼む、通じてくれ!心の中で祈りながら傍に立つ警官らしき人物に声を掛ける。俺に気付いた警官が、がしりと俺の腕をつかんだ。そして。
がちゃん!
「なっ、え、ええっ!?」
俺の手に、なんと手錠を掛けやがった。何が何だかわからなくて目を白黒させていると、もう一人の警官が何やら無線で連絡をしている。
『源三を捕獲しました』
『よし、そのまま連れてこい』
そんな内容が交わされているとは知らず。俺はわけのわからぬままパトカーに押し込まれ、警官たちは車を発進させた。
「おかえり、my sweet!」
「ぎゃ――――――!!」
警官たちに連れて行かれたのはなんとアルベルトの元。どういうことだ!せっかく逃げ出したのに!じたばた暴れる俺をひょいと抱き上げ、アルベルトは警官たちにチップを渡した。
「やめろ!下ろせ、おろしてくれー!」
暴れる俺をアルベルトはちゃんと用件を飲んで下ろしてくれた。
ただしベッドの上にな!
そして俺の上にはアルベルトが乗ってるがな!
「ゲン」
「な、なに…」
すっと頬を撫でられびくびく怯えながら返事をする。
「夜の散歩がしたかったなら言ってくれればよかったのに。窓から行くだなんてワイルドだね。」
「散歩じゃねえよ!逃げたんだよ!あっ。」
しまった、思わず言っちまった!
慌てて口を押さえたが後の祭りだ。目の前のアルベルトがそれはそれはキレイに微笑んだ。
目が笑ってないよ―――!!怖いよ――――!!
「もう、俺に追いかけてほしかったの?かわいいなあ。鬼ごっこには時間がちょっと遅いよね。
でもさ、捕まえたんだから鬼にご褒美ちょうだいね?」
「まっ、まて!ご褒美って、、んん――――!!」
にっこり笑うと、アルベルトは俺の口を塞いできた。
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