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4

非常勤講師として二宮が学校に現れた時、大野は激しく動揺した。

大丈夫。バレるはずがない。あの時の自分は、今の自分とはかけ離れているのだ。ドキドキしながら、壇上で挨拶をする二宮を前の生徒に隠れるようにして見つめていた。


そして、あの日の再会。


大野は、二宮が自分に気付かなかったことに傷ついている自分がいることに気付いた。そして、あのなんの意味もなさないキス。その後の二宮の態度。噂。

自分の知る二宮とのあまりの違いにショックを受けた。


自宅に帰り、ポケットの中身をそっと取り出す。あの日、二宮にもらった飴。そして、今日もらった飴。それらを手にしたまま、机の上の箱をそっと開けて、中身を手に取り、じっと眺める。二宮の、携帯番号の書かれた一枚の紙切れ。それらを胸に、目を閉じると思いだす。あのバーでの逢瀬。楽しかった日々。…最後の日の、二宮の照れた横顔。


「…ふ…っ、…」


大野の目から、涙が静かに溢れ出す。
本当はあの時会っていたのは自分なんだと名乗り出たかった。急に消えてごめんなさいと。本当の自分を見てほしいと。
だが、それは二度と叶わない。自分は二宮から逃げたのだ。二宮も、自分が二宮に何の興味も持たないと思っているからこそああやってからかってくるのだ。

それで、いい。

あの日の自分が、ただの平凡な男だとばれて二度と笑顔を向けてもらえなくなるよりも、今のまま一生徒として笑顔を向けてもらえるなら。
大野は飴と紙切れを、大事に大事に箱の中にしまった。


次の日、学校ではとある話で大騒ぎだった。それは、二宮がこの学校で本命を作ったということ。

「聞いた!?二宮先生、ずっと探してた人がいたんだって!」
「それがこの学校の生徒だったんでしょ?」
「昨日放課後遅く、たまたま残っていた生徒がそうだってわかって先生が告白したらしいよ」
「三年生の花園先輩なんだって!」

大野はクラスの皆の話を聞きながら、目の前が真っ白になるのを感じた。

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