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2

かたりと扉の音に気づき、二宮が振り返る。大野は二宮に頭を下げた。

すると、二宮はにやりと笑いながら大野に近づき、腰を抱いて引き寄せた。


「どうした、子猫ちゃん。俺に食べられたくてきたのか?あいにくだが校内の猫ちゃんには手を出さないと決めていてね。これで許してくれる?」
「…!!」


言うなり、二宮は大野に口づけた。
突然の出来事に、大野は目を見開き固まってしまった。だが、次の瞬間。


――――ばしん!


「…ってぇ…」

大野は、二宮をひっぱたいたのだ。
当の二宮は何が何だかわからないと言う顔をしている。大野は二宮をぎっと睨みつけた。

「僕はそんなつもりはありません!」

ごしごしと唇を拭き、睨みつける大野に二宮は心底驚いた顔をした。


「…へえ、俺を見てそんな風にいうやつがいるなんてな。くくっ、悪かったよ。完全に俺の勘違いだった、許してくれ」


大野は、素直に謝罪する二宮と和解した。だがそれからと言うもの、大野が自分には興味がないとわかるやいなや、二宮は毎日のようにちょっかいをかけてくるようになった。
大野はそのたびに心底嫌そうにし、それを二宮は楽しんでいた。

「お前は俺に特別な感情を持たないからな。冗談言えるから楽しいよ」

二宮はいつか大野にそう言った。



「それでは、失礼します」
「ああ、ちょっとまて」

片づけを終わらせ、大野が二宮に礼をして退室しようとすると、二宮が引き止めた。何事かと扉の前で立ち止まると、二宮は大野の手を取り、掌に飴をころんと二つ落とした。

「いつも部活一生懸命な慎吾君にご褒美。」

にっと笑い、大野の頭をぽんぽんと叩く。

「…ありがとうございます。さようなら」

大野は表情を変えず、ぺこりと頭を下げて退室した。


夕暮れの廊下を歩きながら、掌の飴を見つめる。
…あの時と、同じだ…
大野は泣きそうに眉を寄せ、飴をぎゅっと握りしめて胸に押し当てる。

大野と二宮は、学校が初対面ではなかった。

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