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134000ヒット、山にゃん太様リクエストで、『美形先生×地味生徒(切甘)』です。
頑張ります!
ではどうぞ♪
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「先生、さようなら。」
「さよなら、せんせ〜」
「ああ、さよなら。気をつけてな。」
教室から一人、また一人と生徒たちが挨拶をして去っていく。ニヒルな笑みを浮かべ、挨拶を返す教師に挨拶をした生徒たちは皆きゃあきゃあと黄色い悲鳴を上げて頬を染めて去っていく。
教師の名前は二宮潤(ふたみや じゅん)。高校の非常勤の美術教師で、まだ年若く26歳だ。二宮は一年前にこの学校に非常勤講師として転勤してきた。少したれ目で、すっと通った鼻筋。薄い唇はどこかセクシー。そしてその甘いマスクとは裏腹に、二宮はとてもワイルドな雰囲気を持っていて、学園の生徒は皆そんな二宮に虜になっていた。
男子校でありながら、二宮は生徒の憧れと恋愛の的。それこそ毎日と言っていいほど生徒からの求愛を受けていた。当の二宮は相当の遊び人らしく、外に不特定多数の相手がいるようだった。
校外で可愛い子やきれいな子を連れ歩いている姿を見られたのも一度や二度ではない。
だが、生徒には決して手を出さない。お願いすれば、キスだけはしてくれるとか。そんな二宮をストイックだと生徒たちはますます夢中になって、落としてやろうと必死になっていた。
「…不特定多数の人間がいる時点で、ストイックとかおかしいだろ…」
生徒に手を振る二宮を見つめ、ぽつりとつぶやく生徒がいた。生徒の名は大野慎吾(おおの しんご)。背は標準、顔は平凡で黒髪で眼鏡をかけており、クラスでも地味で目立たない。大野は、美術部に所属していた。
「なんだ?やきもち妬いてんのか?」
生徒たちを見送り、扉を閉めてにやにやと笑いながら大野の近くに寄ってくる。大野は片づけをする自分の傍に来た二宮にちらりと目線を投げかけてその視線を下に落とし、ため息をついた。
「…やきもちなんて妬くわけないじゃないですか。ていうか邪魔です、視界に入らないでください。」
「冷たいなあ、大野。俺とお前の仲じゃないか」
筆を持つ手を指でつう、となぞられ大野はびくりと硬直して筆を落としてしまった。
「…っ、や、めてください…!」
慌てて手を引っ込める大野を見て、二宮はくすくすと笑う。
ああもう、最悪だ。なんでこんな日に限って自分は片づけが遅れてしまったんだろう。大野は二宮から目線をそらし、道具の片づけを急ぐ。
「冗談だよ、冗談。大野はほんとウブだな」
にやにやと嫌な笑いを浮かべながら両手をあげる。
そんな二宮を大野は睨みつけ、黙って片付けを続けた。
大野は片付けをしながら初めてここで二宮と会ったときを思い出す。
放課後、部活のため美術室に入った大野はそこで一人キャンバスに向かう二宮を見た。
真剣な顔で、筆を滑らせる二宮。
…きれいだ。
大野は素直にそう思った。
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