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4

「廉」


食堂に着くと、すぐさま悠里が側にやってくる。廉はいつものように駆け寄ろうとしたが、急にがくんと腕を後ろから引っ張られた。

「なあなあ、あれ誰だよ!紹介してくれよ!」

きらきらと輝いた目で悠里を見つめる尚に、廉は胸がずきりと痛んだ。

「あ…、うん。…彼は横峰くん。この学校の生徒会長で…」
「なあなああんた、下の名前何て言うんだ!?」

廉の言葉を遮り、悠里の腕を掴んで食いつく。悠里は怪訝な顔をして尚を見た。

「…なんだ貴様は」
「貴様なんて呼ぶなよ!俺、平原尚っていうんだ!な、尚って呼んでいいぜ!」

顔を赤くし、悠里にしがみつくその姿を見て廉は顔を曇らせた。
…ああ、やはり。彼はこの世でも、悠里に惚れてしまったに違いない。そんな廉の様子を感じ取った悠里が、尚の手を振りほどき廉の方へ歩み寄る。そして、優しく頬に触れ、その唇にキスを落とす。

「…そんな顔をするな。大丈夫だ。信じろ。」
「悠里…」

今にも泣きだしそうな顔で悠里を見つめる。そんな二人の間を、尚が無理やり引き裂いた。

「な、何してんだよ、廉!そ、そんな、みんなのいる前できすするなんて恥ずかしくないのかよ!」

真っ赤な顔で廉を睨むその顔は、明らかに嫉妬で歪んでいた。

「かまわん。俺と廉は恋人同士で、学園の皆も承知している。貴様に咎を受けるいわれはないんだ。廉、行くぞ。」
「ま、まてよ!」

尚が呼び止めるのも聞かず、悠里は廉を連れその場から去る。その背中を、憎悪の眼差しで睨みつける尚がいた。


あいつはおそらくあの時の隣国王子だろう。まさか同じ場所で転生しているとは思いもしなかった。記憶はないようだが、性格はそのままのようだ。…今度廉に余計なことをふきこんだら、今度こそ殺してやる。


悠里は廉の肩を抱きながら、険しい顔で一言も発することなく歩く。そんな悠里を見て、廉が不安を胸にくすぶらせているとは気づかずに。


それからというもの、尚はあからさまに悠里に引っ付いて回った。悠里はそれを全て無視するも、「照れてるんだろ!」などと意味の分からない解釈をされ尚は自分から離れる気配はない。
尚がいつも悠里に引っ付いているため、廉は悠里に近づくことすらできなくなった。尚はとてもかわいらしくその無邪気さで、学園の何人かの生徒を虜にしていた。そのため、悠里に廉が近づこうとすると、その下僕たちに合図をして廉を悠里の側によることができなくしていた。


悠里は異変に気付くも、いつもあと一歩と言うところで廉とすれ違う。尚は理事長の息子のため、手を出すことが躊躇われた。自分が手を出すと、恐らくこいつは廉を悪者にして自分の親に告げ口をするだろう。廉に被害を及ぼさせるわけにはいかない。今はまだこいつに対抗できるだけのカードがないのだ。自分は役員をしているため、思うように時間も取れずいらいらとしながら確実に尚を排除できる情報を収集していた。

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