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3

悠里に抱きしめられた廉は、その場に泣き崩れた。悠里はそんな廉を抱きしめたまま、自分の過去を話し出す。


あの時、ナオの前に姿を見せるなと言ったのは独占欲から。ユーリはレンをそれこそ閉じ込めておきたいほどに愛していた。ナオがもし、レンに惚れてしまったら。レンがもし、ナオに惚れてしまったら。ユーリは、レンが誰かに奪われることを恐れナオの滞在中自分の方にナオの目をむけておくのに必死だった。だからこそ気付かなかったのだと。
まさか、自分がナオに惚れられ、しかもそんな自分の行動をレンが不安に思っていたことなど。
気付いた時には、レンは王宮から姿を消していた。問い詰めたナオから真相を聞き出したとき、ユーリはナオを斬り捨てようとした。ナオのしていた指輪は、前王が隣国の王と交換したもので、ユーリのしていたものとうり二つだった。
誰が、こんな汚い男に指輪などやるものか!ユーリは烈火のごとく怒り、ナオを罵倒した。
暴れるユーリを数人がかりで抑え込み、ナオはその間に命からがら隣国へと逃げ帰った。ユーリは即座に捜索隊を駆り出し、レンの後を追った。だが時すでに遅し、ユーリがレンを見つけたときにはレンはその命の火を消した後だった。

ユーリは激しく後悔し、悲しみ、狂ってしまった。レンを焦がれるあまり狂い、後を追うかのように病に倒れこの世を去った。レン、とつぶやきながら。


それが、悠里の最後の記憶。

「頼む。逃げないでくれ。俺の前から消えないでくれ。愛してるんだ。今も、昔も。もう二度とお前を失いたくない…」

自分を抱きしめ、泣きながら聞かされた過去に、廉もまた涙を流す。ほんの少しのすれ違いが、自分たちを引き裂いた。

「…ユーリ、愛してる…」

廉は、悠里を受け入れた。


その後、二人は恋人となりあの過去を取り戻すかのように常に二人そばにいる。美形と平凡ながらも、二人は学園公認の仲だった。


そんなある日、季節外れの転校生が現れた。とてもかわいらしいが、自分勝手で思い通りにならないとわめきちらす。廉は運悪く、彼の同室となってしまった。

「廉、俺の事は尚(なお)って呼べよ!」

自己紹介された時に廉は足元がぐらぐらと揺れるのがわかった。この子は、ナオだ。
だが、彼には自分たちとは違い過去の記憶がないらしい。だが、廉は不安だった。過去の記憶がないとはいえ、もしこの子が悠里に会ったとしたら。


その不安は的中する。

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