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6

草壁ちゃんは、きれいな顔をくしゃくしゃにして号泣していた。

「…先輩…!上村、先輩…!」

俺を呼びながら、震える体で抱きしめる。

「先輩は、バカです…!
初めて、なんでしょ…?」


…なんで。なんでわかったの。


「わからないとでも、思ったんですか?この、キスマークに似せた鬱血痕。あれでしょ?小鼻の汚れを、吸引する化粧小物。縄の痕だって、幾度もやり直したような擦り傷がある。あと、そんなとこにつかないってとこまで。慣れてる人はね、そんな初歩的な失敗ややり直しはしません。
…誰かに、頼んだんでしょう…?」


泣きながら、優しく頬をなでる草壁ちゃんを見て俺も涙がじわじわと溢れてくる。


「ひ…っく…、ご、めんな、さい…。ごめんね、草壁ちゃん…。う…っ」


俺ね、草壁ちゃん。昨日温室で草壁ちゃんが話してくれたこと、すごくびっくりした。草壁ちゃんは自分の性癖で俺を傷つけたくないって言った。でもね。俺、自分が鬼畜に攻められるかもって恐怖より何より、草壁ちゃんが今まで誰かとそういうことをしていたこと。そのことの方がショックだったんだ。

温室で言ったこと、本気なんだよ。俺は、君になら傷つけられたってかまわないんだ。君はそれでも俺から離れることを望んだけれど。


俺ね、バカだから。こんなことしか思いつかなかったんだ。
誰かとヤッたって言えば、怒って君のストッパーが外れてくれるんじゃないかって。そしてその勢いで、俺をめちゃくちゃにしてくれないかって。一度でも、抱かれてしまえば。



そしたら、君は俺の側にいてくれるんじゃないかって思ったんだ。



草壁ちゃんが、ボロボロと泣きながらずっと謝罪を繰り返す俺の顔中にキスを落とす。

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