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4

そんなある日。広大は、食堂に来ていた。食堂はあの日のようにごった返し、広大は埋もれてなかなか進めない。少し離れてついてきていた裕輔が、広大を心配そうに見ている。


大丈夫。他のことだって一人でできるようになったです。食堂だって、自分一人でできるです!


実際はこっそり裕輔が色々フォローに回っていたのだが、そんなことは知らない広大は最後の試練に挑むことにしたのだ。


…ここで、一人でトレイを取って席を取って、お食事できたらその時は…

「ゆうと、並んで歩くです。自分でできたよって、お話しするです!」

背伸びをしながら、大好物の卵どんぶりをトレイに乗せる。そっと、そっと。慎重に慎重に歩いてテーブルへと向かう。
後、少し…!


「あっ!」


もう少しでテーブルへ到着しようとしたその時。またも広大は、歩く人波に押され、トレイをひっくり返してしまった。裕輔が慌てて駆け寄る。広大は落としてしまった卵どんぶりを呆然と眺め、ぺたんとその場に座りこんだ。

「…ひ、…っく…。う、うえぇ…」

あと、あと少しだったのに。広大は今まで我慢していた涙が一気にぽろぽろと溢れ出してしまった。そんな広大を見て裕輔は、素早くこぼした卵どんぶりを片付けると、広大をふわりと抱き上げて食堂から連れ出した。


「ゆ、ゆう…?」


急に抱き上げられた広大は、きょとんと裕輔を見つめる。中庭まで来ると、裕輔はベンチにそっと広大を下ろし、広大の前にしゃがみ、よしよしと頭を撫でた。

「ふえ…」

優しく微笑みながら自分を撫でる裕輔を見て、広大はまた涙をこぼす。

「ぼ、僕、やっぱりダメな子です…。やっと、やっと、ゆうにめいわくかけないですむと、思ったのに。ひとりで、できるようになると思ったのに…」
「迷惑、なんて思ったことないよ」

広大は、目の前から聞こえてきた声にぴたりと涙を止めた。

「ゆう…?」
「広大を迷惑なんて思わない。どうしてそう思ったの?」

ゆうが、お話してくれてる…。迷惑じゃない、って、ほんとう…?
優しく微笑む裕輔に、広大はこしこしと涙を拭いた。

「…だって、社会科資料室で、聞いたです…。せ、先生が、ゆうに僕の事どう思ってるかって…」

裕輔は少し考えてから、ああ、と声を出した。


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