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2

それからというもの、広大は裕輔に引っ付いて回るようになった。裕輔も、教室に来ると無言で広大を探す。それはさながら、かるがもの親子のようで校内ではちょっとした名物になっていた。


「ゆう、ゆう。」


今日も広大はぽてぽてと祐輔を求めて廊下を歩いていた。広大がちょっとトイレに行った隙に日直のため祐輔が先生に呼ばれてしまい、教室に戻ると祐輔がいなかったためだ。
すぐに戻ってくるからと言う皆の言葉にうるうると涙をため、首を振って迎えに行くと皆が引き留めるのも聞かず飛び出したのだ。


「ふえ…、ゆう…」


職員室へ行ったら、担任に連れられ社会科資料室へ行ったと言われ、そちらへ向かっていた。祐輔に引っ付くようになってから今日まで、こんなに長い距離を一人で歩いたことのなかった広大は心細くなってじわりと涙を浮かべる。


「ぼく、今までどうやって生きてたですか…」


祐輔。祐輔がいてほしい。よしよししてほしい。そばでいつも笑っててほしい。裕輔がいないと、寂しい。

「悪いな、田上。こんなことまで頼んで」

とある扉の前を通ると、聞き覚えのある名前が聞こえて足を止める。田上。確か、裕輔はそんな名前だったはず。ふと見上げると、
『社会科資料室』
の札が目に入った。
途端に、ぱあっと笑顔になる。ここだ!

「そういやお前、藤井とよく一緒にいるらしいな?」

扉を開けようとして、ぴたりと止まる。自分の名前?広大はそっと耳を扉に近づけた。

「お前がよく面倒を見てやってるんだって?学校で噂だぞ。藤井はぽやぽやしてるからな、かわいいだろ」

先生が裕輔に楽しげに話している。自分の事を言われ、広大は扉の外で顔を赤くした。裕輔は、なんと答えるのだろう。ドキドキしながら耳を澄ませる。


「………いや、別に…」


広大は、裕輔の答えにひゅっと息をのむ。
『別に』
裕輔の言葉に、頭が真っ白になり、膝ががくがくと震えた。そしてゆっくりと扉から体を離し、その場から逃げだした。

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