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名無しのわんこ様リクエストで『平凡(無自覚可愛がり)×美形可愛い系(泣き虫・甘えた)』です。

砂吐き注意ですよ!(笑)


頑張ります!
ではどうぞ♪

―――――――――――

「えっと、えっと…」


食堂で、トレイを持ったままキョロキョロと空席を捜す男が一人。藤井広大(ふじい こうだい)。背が低く、くりくりとした大きな目、ふっくらとしたバラ色の頬。ぷっくりした紅色の唇。愛玩動物のような彼は、平均よりも低い身長のため、人でごった返す食堂で周りの人垣に埋もれていた。
必死になって背伸びをしていたら、後ろから来た人にぶつかられてバランスを崩してしまった。

「あっ!」

がしゃん!
持っていたトレイを落とし、料理を床にぶちまけてしまった。

「…ど、しよ…。…ひっく…」

途端にじわじわと涙が浮かび、顔が真っ赤になる。早くなんとかしなくちゃいけないのに、どうしてよいのかわからず焦っていると、ぽんと優しく頭を叩かれた。
何事かと振り向くと、そこには同じクラスの田上祐輔(たがみ ゆうすけ)がいた。背は平均より高めだが、見た目は平凡。無口で、声を発しているのを聞いたことがない。同じクラスだけれど、広大は祐輔と話したことなどなかった。


祐輔は無言で広大の手を引き、近くの空いていた席に座らせる。そして、しばらく離れたかと思うと先ほど広大がぶちまけてしまった卵どんぶりの新しいのが乗ったトレイを広大の目の前においた。
箸を割り、広大の手に握らせる。そして、祐輔は無言で広大のぶちまけた卵どんぶりを黙々と片づけ始めた。


だが、片づけている途中、広大が卵どんぶりに手を着けていないことに気付くと一旦片づけを中断し、広大の傍による。そして、また無言で新しい箸を自分の手に取り一口分掬うと広大の口元に差し出した。


…た、食べろってことなのかな…


広大は恐る恐るその愛らしい口を開け、祐輔の差し出す箸にぱくりと食いついた。

「…あーん、だ…」
「あーんした…」
「餌付け…?かわい…」

一部始終を目にしている周りの生徒から、ぼそぼそと声があがる。広大は祐輔の差し出した卵どんぶりを口にすると、ちらりと祐輔を見た。


祐輔は、優しく微笑んでいた。そして、もう一口分箸で掬い、また広大の口元へと運ぶ。広大は差し出されるそれを、あむあむと食べた。
幾度か食べさせた後、よしよしと頭を撫でる。広大はそれにこくんと頷き、自分の箸で卵どんぶりを一口食べた。それを見届けた裕輔が、広大から離れ片付けの続きを始める。
片づけを終わらせた裕輔が戻ってくるころには、広大も半分ほど食べ終えていた。戻ってきた裕輔を見るなり、広大は箸を止めじわりと涙を浮かべる。

その様子を見た裕輔がまた広大の頭をよしよしと撫で、箸を取り一口掬う。広大はぱちぱちと瞬きした後、慌ててごしごしと目をこすり、裕輔の差しだすご飯をぱくりと食べた。


「餌付け…」
「餌付けだな…」


その様子を見て、周りの生徒たちは何だか温かい気持ちになった。


「ごちそうさまでした」

全て食べさせてもらった広大は、手を合わせる。裕輔がにこりと微笑み、広大のトレイを手に立ち上がる。広大は慌てて立ち上がり、ついていく。

「ぼ、ぼくがやるです!」

トレイを持とうとするも、裕輔にやんわりと制止される。

「ぼ、僕が持つと危ないから…?」

なんとなく裕輔の雰囲気で、そう言いたいのかを察して問うと、裕輔はにこりと微笑んで軽く頷いた。

「じ、じゃあ一緒に行くです。」

そう言うと、にこりと微笑む。そして、広大の手を取り自分のブレザーの裾を持たせた。広大は、ぱあっと笑顔になり、にこにこと笑いながらとてとてと裕輔について行った。


「…かるがも…」
「ひよこ…」


それを見ていた周りの生徒は、こっそり写メを撮っていた。

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