×
人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -




9

二人で教室にカバンを取りに戻ると、高遠がいた。

「なに、うまくまとまっちゃった感じ?」
「…おかげさまで」

高遠の言葉に苦々しい顔で秋元が答える。高遠はそんな秋元を鼻で笑い、佐山の方に顔を向けた。

「…だから言ったろ。バカはあいつだって。」
「…あ、あの、高遠は知ってたのか?その、秋元がなんで俺に冷たくするかとか…」
「知ってたっつーか、バレバレ。こいつな、佐山に冷たくするたび、悲しそうに去ってく佐山の背中をじっと捨てられた子犬みたいな顔で見てたんだよね。」
「うるさい」

高遠の言葉に、真っ赤になって秋元がそっぽを向く。

「好きな子ほどなんとやら。ま、あんまりひどいもんだから好きな子いじめて泣かせるとか小学生かよって思って、ちょっとお灸据えてやろうと思ってお前を庇いに行ったわけだけど。秋元を焦らせるためにね。…でも、予想外に佐山かわいいからな。秋元にやるかどうか迷った。」

ふ、と笑い佐山の頭を撫でる。すると、秋元が慌てて佐山を引っ張り、高遠から引き離した。

「何勝手に頭撫でてんの。触んないでくれる?」

秋元のあからさまな独占欲に、高遠は両手を上げて降参のポーズを取る。佐山はそれを聞いて、顔を真っ赤にした。

「た、高遠。あの…ありがとう。」

にこりと笑い礼を言う佐山に、高遠がにこりと微笑み返す。

「…やっぱお前、その方がいいよ。これからはずっと笑ってな。」
「ご心配なく。これからは僕がずっと笑顔にしてやるから。もう悲しい顔なんてさせないよ。…泣くのは、ベッドの上だけで、な?」


秋元の最後の言葉に、ますます顔を赤くする。

「あ、あの…秋元」
「ん?」
「…俺が、抱かれる方、なの…?」

真っ赤な顔で秋元を見てそういう佐山に、高遠と秋元が目を見開いた。

「当たり前じゃん。こんなかわいいくせに、タチなんて似合わないよね?和志。」
「…そうだな。」
「あう…」

二人してにやりといやらしい笑いを向けられ、佐山はズボンをきゅっとつかみ真っ赤になって俯いた。秋元はそんな佐山にぎゅっと抱き着く。

「ああもう、だからそういうところがかわいいんだって!…覚悟しなよ?今までいじめてた分、どろっどろに甘やかしてあげるから。」
「ひゃあ…!」

そう言って佐山の耳をかぷりと咥えた。思わずびくりとして、変な声が出てしまい、慌てて口を押えた。

高遠が肩をすくめ、教室から出ていく。その扉の前で、ぴたりと足を止め佐山を振り返った。

「あ、そうそう、佐山。あの時倉庫で渡したスポーツドリンクだけど、あれ俺じゃないから。」
「え?」
「あれね、多分俺が行く前に倉庫の入り口あたりで挙動不審だったそいつ。」

高遠がにやりと笑って指さす。佐山が指先を追うと、真っ赤になった秋元がいた。

「じゃあね〜」

ひらひらと手を振り、教室を出ていく。秋元は小さく舌打ちして、佐山をちらりと見た。

「…その、あの時も、ごめん。…なるべく触るなって言ったのも、実はドキドキしすぎて震えちまうからで…。もう色々限界だったから、お前一人でいるとこ見計らってそれ持って謝ろうかどうしようかと思ってたら和志が来て、慌ててドリンクだけ置いて逃げちゃって…」

真っ赤になってしどろもどろという秋元に、佐山はそっと手を伸ばす。

「…ありがとう」
「…!」

にこりと微笑む佐山に、秋元はカバンを二つひっつかんで佐山の手を引き走り出す。

「あ、秋元!?」

急に引きずられ、佐山が驚きながらも必死についていく。


「我慢できない。思い切りかわいがったげるから、僕の部屋行こう。」

秋元にぎらぎらと欲情した熱いまなざしで見つめられ、こくんと小さく頷き掴まれた手を握り返す。
佐山はその日、甘く愛を囁かれながら秋元に一晩中泣かされた。


それからというもの、秋元は佐山を宣言通りどろどろに甘やかし、ところ構わずキスをする。片時も傍から離れないし、休み時間でも佐山を抱きしめて離さない。その溺愛っぷりに周りの皆が引くほどだ。佐山は笑顔が多くなり、その笑顔に見とれる者も少なくない。


秋元に切り裂かれた傷は、切り裂いた秋元が愛という薬を傷口に優しく塗りつけてくれる。
その薬は何度も何度も塗り重ねられ、傷口が二度と開くことはないだろう。


end
→あとがき



[ 282/459 ]

[*prev] [next#]
[mokuji]
[しおりを挟む]


top