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5

ずかずかとこちらに近寄り、佐山の頭に置かれている高遠の手を思い切り払う。

「何やってんだよ、和志!なんで佐山と二人きりでいるんだ!」

秋元が高遠に怒鳴ると、高遠は軽く肩をすくませた。

「別に。ただ話してただけだけど。何?なんか都合悪い?」

淡々と話す高遠に、秋元はますます怒りだす。

「っ、何を佐山と話すことなんてあるんだよ!こんな奴、一緒にいたって何もいいことないだろ!」

秋元の言葉に佐山は唇を噛みしめて俯く。

「俺が誰といようが俺の勝手だと思うけど。何?ダチが話すのも嫌なほど佐山が嫌いなの?」
「…!き、らいだよ!嫌いだって、前から言ってるだろ!こんな、いつも人の顔ばかりちらちら見ておどおどしてて、謝ってばかりいるやつ!好きになんかなるわけない!」


秋元の最後の言葉を聞いて、佐山の中で今まで押し殺していたものがぷつりと切れるのがわかった。

「…秋元、そんなに俺の事嫌い?」

今まで黙り込んでいた佐山の突然の問いかけに、秋元はびくりとして佐山を振り返る。

「…嫌いだよ」

苦々しい顔をしてそういう秋元に、佐山はにこりと微笑みかけた。


「…そっか。…俺は、すき、なんだけどな。」


そう言った佐山の頬に、一筋の涙が伝った。


佐山の告白に、秋元がこれ以上ないくらい目を見開き、息をのんだ。高遠も驚いて黙ってしまったまま動かない。

「…ごめん」

佐山はそういうと、教室から駆け出した。


もう、もうだめだ。言ってしまった。絶対に、言わないって決めていたのに。でも、我慢できなかった。秋元に直接嫌いだと言われた時に、もういいやって思ったんだ。秋元は、俺を好きになることなんて絶対にないと言った。なら、自分の気持ちだけは伝えてもいいかなって。
もう、二度と秋元と話せることはないだろう。自分も、もう二度と秋元に近づくことはやめよう。秋元と関わりそうになったときは、事前に誰かと代わってもらおう。


絶対に秋元の事で泣かないって決めていた。泣きたくても笑っていれば、何かいいことがあるんじゃないかって。でも、今だけは。今日だけは。流れる涙を拭うこともせずに走っていた。




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