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どうしよう。秋元があんなに怒るなんて。
無理もないかもしれない。今まで仲の良かった友達が、いきなり自分の嫌いな人間と行動するようになったのだ。それは自分を嫌いな秋元にとって、ひどく嫌なことだろう。…自分は元々嫌われているからいいけれど、そのせいで高遠と秋元が仲たがいをしてしまったら。
「…これ以上、嫌われるのもつらいな…」
佐山は部屋で一人ぽつりとつぶやいた。
「佐山さ、秋元が好きなの?」
ある日の放課後、皆が帰り教室で高遠が二人きりになった時に突然聞いてきた。
いきなりの発言に、佐山は完全に動揺して口をぱくぱくと金魚のように開閉する。
「な、なんで…」
ようやっと出た言葉に、高遠はこてんと首を傾げた。
「ん〜、勘?お前よく秋元ちらちら見てるし、秋元に睨まれたり秋元が誰かとしゃべってたりするとすごく悲しそうな顔してるし。」
そうなんだ。自分では全く気付かなかった。高遠にバレているということは、秋元にもバレているんじゃないか。佐山は頭を抱えた。
「どこがいいの?あんなお前に対してひどい奴。」
高遠の言葉に、ずきりと胸が痛む。そうだ。自分がいくら恋い焦がれたところで、秋元は自分を嫌っている。嫌いな奴に行為を寄せられて嬉しい奴なんていないだろうな。…誰にも言えないこの恋心を、聞いてもらえたら少しは楽になるだろうか。佐山はふと笑い、ゆっくりと口を開いた。
「初めは、一目ぼれだったんだ。天使かと思った。すごくきれいで、何より笑った顔が優しくて。話しかけたかったんだけど勇気がなくてさ、ずっと気付かれないようにこっそり見つめてた。ずっと見てるうちに、すごく優しい人だなって。明るくて友達もいっぱいで、皆が秋元に引き寄せられる。ほんとに春の日差しのような人だなあって思ってたんだ。
そう思うほど、どんどん好きになって…。」
そこまで言うと佐山は悲しそうに目を伏せた。
「…俺、初めて話せたときに失敗しちゃったんだ。秋元の嫌なことを多分しちゃって。初めて話せて、浮かれてたのかもしれない。それからずっと、秋元に嫌われてる。でもさ、俺、バカだから。めちゃくちゃ嫌われてるのわかってるのに、諦めきれないんだよね。」
ふふ、と泣きそうに笑う佐山の頭を、高遠がそっと撫でた。
「…バカはあいつだよ。」
「…え?」
ぽつりと呟いた高遠の声がよく聞き取れなくて、佐山が高遠をじっと見つめる。高遠の言葉を待ち、見つめあっていると突然教室の扉が勢いよく開けられた。
「…なにやってんだお前ら」
そこには、怒りに満ちた顔で睨みつける秋元がいた。
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