3
片付けを終わらせ、倉庫を出ると高遠がスポーツドリンクを差し出してきた。
「え?俺に?」
「…え?これ…
……いや、うん。お前に。」
高遠を見ると、ちょっと驚いたような顔をして言いよどんでからスポーツドリンクを手に持たせてきた。
「あ、ありがと…。ごめん。」
「なに?」
「…俺、高遠には嫌われてると思ってたから…。だから、ごめん。」
申し訳なさそうに下を向き、謝罪をする佐山に高遠はぷい、とそっぽを向く。
「…別に、俺はお前が嫌いなわけじゃないよ。秋元とはダチだけど、だからって便乗してしゃべった事も無い奴を意味なく嫌ったりしない。」
ぶっきらぼうだがはっきりと言う高遠に、佐山は知らず微笑んでいた。
「…ありがとう」
高遠はちょっと照れたように、教室に向かって歩き出す。ゆっくり後を歩く佐山を振り返り、また声を掛けた。
「何してんの。一緒に行こうぜ、教室。」
「う、うん。」
思わぬ高遠の言葉に、佐山は目を見開いた後慌てて高遠の隣に並ぶ。教室に帰った二人を見たクラスの皆が、ひどく驚いた顔をしてこちらを見ていた。その中には、眉間にしわを寄せて佐山を睨みつける秋元の姿もあった。
「佐山、一緒にめし食おうぜ」
あの倉庫での一件があってから、高遠は昼休みに佐山と一緒に食べるようになった。佐山は嬉しいながらも、そのたびにこちらを睨む秋元の視線にズキズキと胸が痛かった。
「あ、あの、高遠…。いいのか?」
「なにが?」
「…いや、その…」
「秋元の事なら気にするな。別に喧嘩とかしたわけじゃないし、俺がただお前と食べたいだけだから。」
高遠の言葉に、じんとする。
「…ごめん」
俺のせいで秋元に何か言われるんじゃないか。そんな心配からでた言葉だったが、高遠は謝罪を聞いて怪訝な顔をした。
「なんで謝るの。俺が好きでここにきてんのに。前から思ってたけど、佐山ごめんって言い過ぎ。気い使うなよ。友達なのに。」
「とも、だち…?」
「うん、俺はそう思ってたけど。違った?」
俺と高遠が、友達。
秋元に嫌われているというのがクラスに知られてからというもの、佐山は『あの秋元に嫌われているやつ』という認識からクラスの皆からハブられていた。仲良くなり始めていたクラスメイトも、いつのまにか自分から離れてしまっていた。高遠がこうして一緒にいてくれるようになるまで、佐山は一人ぼっちだったのだ。
「…嬉しいよ。ありがとう」
にこりと笑い、高遠に礼を言う。その顔を見た高遠が同じくにこりと笑い、佐山の頬に触れてきた。
「うん、お前そっちの方がいいよ。」
がたん!
突然、秋元が勢いよく立ち上がった。驚いてそちらを見ると、秋元は怒りに満ちた目で佐山を睨み、そのまま教室を出て行った。
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