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2

「何笑ってんの、気持ち悪い。」
「…ごめん」

謝る佐山にまた舌打ちをし、秋元は佐山をどん、と押した。

「なるべく触れないようにしてくんない?気持ち悪いからさ。」
「うん、ごめん…」

ざくざくと、言葉というナイフで胸を切り裂かれる。その後、言われるままになるべく彼に触れないように体操を続ける。体操が終わると、秋元は少しふれた指先を汚らしいとでも言うように振ると、さっさと元の場所に戻ってしまった。

体育が終わり、佐山は一人で道具の片づけをしていた。ふう、とため息をついて、ふと空を見上げ秋元の事を思い出す。

『お前みたいなやつ、嫌いなんだよね』

秋元の言葉を思い出し、ずきりと痛む胸を押さえる。

触れるな。話しかけるな。気持ち悪い。

「…あんなに、嫌われるなんてな…」

何を間違ってしまったんだろうか。初めて話しかけたときに、自分はそんなにまずいことを言ってしまったんだろうか。あの日に彼にかけた言葉が間違っていたのかと悔やまれる。できることなら、もう一度やり直したい。

…ここまで嫌われているとわかっていても彼が好きな俺は、バカなんだろうか。

じわり、と涙が目に滲む。
泣いちゃいけない。泣いちゃいけない。泣いたあとのある顔で教室に戻るわけにいかないから。



かたん



倉庫にボールを片付けていると、後ろから音がした。振り返ると、同じクラスの高遠和志(たかとお かずし)がいた。

「…」


高遠とはあまり話したことがない。彼は確か秋元の友人だ。俺のことをあまりよく思ってはいないはず。
振り返ってしまったものの、なんと声をかけてよいのかわからない。黙っていると、高遠が中に入り、ボールを片付け始めた。

「あ、の…」

佐山が話しかけるも、黙々と片付けを手伝う。佐山は同じように黙って片付けを続けた。


「…気にすんな。」


ふいに、高遠が声を出す。佐山が顔を上げると、高遠は佐山をちらりとだけ見た。
先ほどの秋元とのやり取りのことを言っているのだろうか。

「…ありがとう」


佐山が礼を言うと、高遠は少し照れたように見えた。


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