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8

「さっきお前は、俺を卑怯者だと言った。…その通りだ。俺は卑怯者だ。お前に拒否されるくらいなら、お前を脅して縛り付けておこうと考えたんだ。嫌われたっていい。怯えられたっていい。それでお前を手にしていられるなら。…お前を側に置いておけるなら…。

バカな俺は、それでお前がどうなるかなんて考えてなかったんだ…」


泣きそうな顔で、震える手で僕を抱きしめ、話を続ける。その内容は、今の僕には到底信じられないことばかりで。彼の腕の中でただただじっと話を聞いていた。


「毎日抱くうちに、お前が痩せているのに気づいた。何とかしないとって、焦って、出会った日におまえの側に落ちていたデザートを思い出した。…でも、俺のせいで食べられなくなってたなんて思わなくて…
ゼリーをやっと食べてくれたお前を見て心底ほっとした。…でも、ただの一時しのぎだったんだな。ずっと食事をまともにしてなかったんだろう…?」


僕を抱きしめる腕が、強くなる。


「…っそれでも、お前を手放せなかった…!俺のせいで弱っていくのに、お前がいなくなることだけはどうしても嫌だったんだ…!」


竜馬さんが僕を抱きしめながら、震えているのがわかる。…泣いているんだ。あの、傲慢で俺様な、気高い人が。僕のことなんかで。

「お前に今日『もう抱かれたくない』と言われた時は目の前が真っ暗になった…自業自得なのに、みんなの前でカッコつけるしかできなくて…。ちんけなプライドで、俺はお前を傷つけ続けて…、
…シン、頼む。壊れないでくれ。心がいらないなんて、言わないでくれ。頼む、…愛してるんだ…」

自分に起きていることが、夢なんじゃないかと思う。あの竜馬さんが、僕に。まだ、よく理解できなくて。涙に滲む目に、ふとベッドサイドにある小さな棚が移った。その天板に乗っている物体を見て目を見開き、何度も瞬きをする。


…僕が食べることのできるといったブドウゼリーがいくつも乗っていた。


「…竜馬さんは、やっぱり卑怯者だ…」

僕の言葉に、抱きしめる彼の体がびくりと硬直し、息を飲むのがわかる。僕はそんな竜馬さんの背中に、自分の腕をそっと回してぎゅうとしがみついた。

「そんな言葉で、態度で僕を縛り付けるなんて、卑怯です…。僕はもう、ずっと前からあなたに囚われて、苦しくて辛くて身動きができないのに。今度は、嬉しくて身動きが取れなくなる…!」
「し、ん」
「…っ、あなたが卑怯者なら、僕は愚か者です。だって僕は、本当はずっとあなたに愛してほしかったから…!あんな扱いを受けても、それでもあなたの側にいたかったんだから…!」


そう言って泣きながらしがみつく僕を、竜馬さんは強く強く抱きしめた。

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