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「竜馬、さん…?」
どうして、彼が僕の手を握っているのだろう。どうして僕は病院にいるのだろう。
わけがわからなくてしばらくぼうっとしてると、竜馬さんが身じろいで、目を覚ました。
顔を上げた彼は、竜馬さんを見つめていた僕と目が合うと驚いて目を見開いた後唇をわなわなと震わせた。そして同じように震える手で、ゆっくりと僕の頬に触れる。
「…よかった…目が覚めたか。どこか痛いところは…?」
竜馬さんの問いかけに、緩く首を振る。竜馬さんはひどくほっとしたようにため息を吐いた。頬に触れた手で、僕の頭を優しく撫でる。僕はその行為に、先ほど見た夢を思い出してぽろぽろと涙をこぼした。
「シン…?どうした、やっぱりどこか痛むか?」
竜馬さんの問いかけに、くしゃりと顔を歪め、胸を掴む。
「…痛い、です。胸が、痛い。…やめて、ください。そんな風に、優しくしないで…。もう、これ以上辛い思いしたくないんです…」
優しく触れられるのがつらくて、竜馬さんのそんな優しい顔を見たくなくて僕は顔を反対に背けた。でも、竜馬さんはそんなの僕の顔を両手ではさみ、また自分の方へ向けてしまった。
あ、と思うと同時に、目の前に竜馬さんの顔が迫り、そのままそっと口づけられた。
「ん、う…」
優しく、深く口づけられる。どうして。なんで。混乱する僕から、ゆっくりと竜馬さんが唇を離す。こつん、とおでこをくっつけ、竜馬さんはひどく愛おしそうに僕を見つめた。
「…シン、お前が好きだ…」
突然の竜馬さんの告白に、頭が真っ白になった。
「…お前を初めて見たとき、言いようのない感情が体中を走った。言葉なんかじゃ説明できない。お前が欲しい。それしか思いつかないくらいの衝撃を受けた。
俺は、ほんとにその時ただ目新しいおもちゃを見つけたガキの気分だと思ったんだ。だから、なんの躊躇もなくお前を玩具だと言って凌辱した。…凌辱しながら、お前を絶対に離したくない。そう思ったんだ。」
…やっぱり、僕は彼にとって単なる玩具でしかなかった。知らされた事実に、きゅっと唇をかむ。竜馬さんは、噛みしめた僕の唇をそっと指でなぞった。
「でも、毎日お前を抱くたびに…、自分の独占欲が玩具に対するものじゃないことに気づいた…。
でも、気付いたところでどうしていいかわからなかった。お前にとって俺は自分を無理やり犯す恐怖の対象でしかない。今さら、それが特別な感情からくるものなんだと言った所で受け入れるどころか拒否されたら。
…俺はもうその時には心底お前に夢中になっていて、お前を手放すことなんて考えられなかったんだ…」
噛みしめた僕の唇に、そっとキスをする。僕は竜馬さんの言葉を理解しようと精いっぱいだった。
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