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その後いつものように犯され、家に帰った。自室に戻った僕は、ベッドにもぐりこみながら自分を抱きしめて小さくうずくまる。
…ああ、僕は愚か者だ。どうしようもない、救いようのないばかだ。
あの時。竜馬さんが僕を見つめるその表情を見たとき、僕は僕の中で生まれつつあった感情を完全に理解してしまった。
あんな目にあったのに。彼は、僕を凌辱しているのに。
「…好きに、なるなんて…」
彼は、行為の間もその後もとても優しく僕に触れる。口ではひどいことを言うのに、裏腹に僕をとても大事に扱うのだ。
ぽたぽたと、涙が零れ落ちる。ああ、僕はばかだ。それはただの気のせいかもしれないのに。いくら態度が優しく感じたってそうあってほしいと願う僕の勘違いかもしれないのに。彼は僕を玩具としか言わないのに。
「…っ、もう、いやだ…」
彼が、好きだ。
自分の中でその感情を認めてしまった今、ただの玩具と言われることに胸が苦しかった。
「…てめえ、また痩せたんじゃねえのか?」
それからも毎日、僕は変わらず玩具として彼に呼び出され抱かれていた。自分の感情に気づいたとしても、それで僕が今の状況をどうにかできるはずもなく。呼ばれるたびに重い足を引きずりながら呼び出し場所の公園に向かう。
抱かれたい。抱かれたくない。好きだ。愛してほしい。解放してほしい。捨てられたくない。捨ててほしい。
ぐるぐる回る感情の中、僕はますます食欲をなくしていた。
「抱き心地がよくねえっつったろうが、ちゃんと食ってんのか。」
僕を撫でまわしながらいらいらと言い捨てる。僕は竜馬さんの顔をじっと見つめていた。
…ああ、やっぱり。彼は僕にひどい言葉を浴びせながらその顔はとても辛そうに見えた。
「…どうして…」
どうして、そんな顔をするの。どうして僕を気にするの。
「なんだ?」
「…なんでも、ないです…。抱き心地が悪くて、ごめんなさい…」
僕が目を閉じると、竜馬さんはぎゅっと僕を抱きしめた。僕は恐る恐る、彼の背中に手を回す。
「…お前…」
僕の行動に一瞬びくりとこわばった彼が、ますます僕をぎゅっと抱きしめた。ああ、どうして彼はこんなにも残酷で優しいんだろう。玩具だというなら、玩具としてぞんざいに扱ってほしかった。こんな勘違いをするような温かい手で触れてほしくなどなかった。
その日、竜馬さんは僕の名を呼びながら今まで行われた行為の中で一番優しく僕を抱いた。
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