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3

それからというもの、利紀は物陰に隠れながらよく大貴を見つめるようになった。とはいっても、へたくそですぐにバレてしまうのだが。大貴に見つかり、目が合うたびに真っ赤になって下を向くか逃げ出してしまう。そんな利紀が、大貴は可愛くて仕方がなかった。


「お前、どういうつもりなんだよ!」
「どういうって…」
「そうだそうだ、姫ちゃんがかわいそうだろ!」
「思わせぶりな態度はやめてやれよ!」
「かわいそうに、あんな健気にお前の後を追いまわして…」
「俺らの姫ちゃんを返せ!」


そんな二人のやり取りを見ていた利紀のファンたちが、ある日大貴を取り囲み口々に責めたてた。大貴は返答に困ってしまった。そもそも、告白はされたものの利紀から付き合ってくれと言われたわけではない。利紀は今は恥ずかしさを克服するために頑張っている最中なのだ。だがはたして、そのように言ったところで通じる相手だろうか。
大貴は利紀に、無理はしてほしくなかった。だからこそ『陰から見たい』という利紀の要望を飲んだのだ。先に進むのは、自分の意志でしてほしい。利紀が何か答えを出せたときには、自分もそれにちゃんと応えよう。そう思っていたのに。


「何とかいえよ!お前、ほんとは姫ちゃんの健気な態度をおもしろがってるんじゃないだろうな!」


無言で眉を寄せる大貴に、ファンたちは尚も詰め寄る。


「や、やめて!」


今にも暴力でも始まりそうなその時、利紀がぱたぱたと駆けつけた。

「ひ、姫ちゃん!」
「ち、違うんだよ、こいつが姫ちゃんの気持ちをもてあそぶから…」


皆の言葉に、利紀が泣きそうになりながらふるふると首を振った。


「ち、違うの。野村君は悪くないの。ぼく、ボクが、勝手に野村君に付きまとってるだけなの!」
「でも、姫ちゃん…」
「ほんとなの!野村君はなにも悪くない!ぼく、ぼくが…」


利紀は、とうとうぼろぼろと泣き出してしまった。


「うっく、ご、めんなさい。野村君、ごめんなさい。ぼく、もうやりません。今まで、ありがとう!」
「姫ちゃん!」
「姫ちゃん、まって!」
「走っちゃ危ないよ姫ちゃん!」


ぺこりと大貴に頭を下げると、利紀は駆け出してしまった。ファンたちが必死になって利紀の後を追う。


「…しょうがないな」

一人取り残された大貴は、何かを決心してぽつりとつぶやいた。

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