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利紀は、自分を特別扱いしない人間は初めてだった。時に厳しく、時に優しく。ひとつひとつ丁寧に教えてくれる大貴は、利紀の目にとてもまぶしく映った。
「おいしい!姫ちゃんの作ったカレー、すごくおいしいよ!」
「すごいよ姫ちゃん、俺こんなうまいカレー初めて!」
「さすが姫ちゃん!」
出来上がったカレーを、皆一様に大げさにほめたたえる。利紀は、ちらりとカレーを口に運ぶ大貴を見た。
「ん、うまい。よく頑張ったな、お疲れさん」
誰の言葉より、その一言が嬉しかった。
にこりと笑い、利紀の頭をポンとたたく大貴に、利紀は胸がきゅっとなった。
利紀は、その時にはもう大貴に恋に落ちていた。
毎日毎日、大貴を目で追ってしまう。大貴を見るたび、胸が苦しくて仕方がない。利紀は、大貴にありのままを告白した。
あなたが好きです。あなたを見ると胸がきゅっとなって苦しいけどくすぐったくて幸せです。でもあなたと目が合うと恥ずかしくてたまりません。だからあなたの目がまっすぐ見れるようになるまで、隠れて見ててもいいですか。
「…いいけど」
大貴の返事に、利紀はぱあっと輝くような笑顔を見せた。
「ありがと、ありがと。野村君、ボクがんばるよ!」
大貴の手を握り、ぶんぶんと大きく上下に振る。そのあと、利紀は「やるぞおー!」と叫んで駆け出して行ってしまった。
「…付き合う、とかじゃないんだ」
一人残された大貴は、先ほどの利紀の告白を思い出し、くすくすと笑った。
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