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7

次の日、伊集院は原口と共に学園内のカフェに来ていた。
そわそわと落ち着かない伊集院の手を握り、原口が大丈夫だと言うようににこりと笑う。

「晴哉、こっち」

カフェの入り口に現れた人物を見つけ、原口がこちらへ呼ぶ。晴哉と呼ばれた男は、にこにこと笑いながら伊集院たちの向かいの椅子に腰掛けた。

「改めて紹介するよ、弟の晴哉。」
「はじめまして、原口晴哉(はらぐち はるや)です。兄ちゃんがいつもお世話になってます」
「は、はじめまして…伊集院崇です。あの、こないだはその、ごめんなさい…」



『あいつ、弟なんだよ。』



飼育小屋から部屋に戻り、二人で転がっているベッドの上で原口から聞いたときは目が落ちそうなほど驚いた。

『似てないだろ?俺は父親似で、あいつは母親似だから。』

確かに、言われなければ誰も気付かないだろう。原口は平凡だが、晴哉はとてもかわいらしい見た目をしていた。だからこそ、伊集院は晴哉に嫉妬した。
自分はイケメンだが、かわいい部類ではない。晴哉のようなかわいい子が好みだと言われてしまえば、太刀打ちできないと考えたからだ。



「えへへ、痛かったけどいいよ。ごめんね、俺が兄ちゃんに抱きついちゃったからやきもちやいちゃったんだよね。あの時、兄ちゃんからようやくお許しが出たのが嬉しくて思わず抱きついちゃったんだ」
「お許し?」
「うん。あのね、飼育小屋でインコが卵産んだの知ってる?俺たち二人とも鳥が大好きでさ、でも兄ちゃんは俺に雛の世話は絶対に無理だってさせてくれなかったの。でも、飼育小屋に通って兄ちゃんからいろいろ教えてもらって、ようやくこないだ雛の世話をやらせてくれるって言ってくれたんだ!」


にこにこと笑いながら話をする晴哉を見て、伊集院は笑顔が似てる。やはり兄弟なんだなと思った。


「あ、伊集院さん、心配しないでね!雛の世話は飼育小屋ではしないよ、俺の部屋でするからさ。二人の愛の巣にはお邪魔しないよ〜」


晴哉の言葉に真っ赤になる。言ったんだろうか、俺がやきもちを妬いて言ったあのことを。


「えへへ、飼育小屋に通ってる間ずっと兄ちゃんにぶつぶつイヤミ言われてたんだよね。『ここは俺たちの愛の巣なのに、なんでお前を入れなきゃなんないんだ』って!
兄ちゃんね、電話でも飼育小屋でもずっと伊集院さんのことばっかりのろけるんだよ!
『すげえかわいい恋人なんだ』とか、『俺の前だけふにゃふにゃなのがかわいい』とか、『好き過ぎてどうしていいかわからない』とか。
俺、砂吐きそうになっちゃったけど、兄ちゃんの気持ちわかるな。伊集院さん、兄ちゃんといるとすっげえかわいい」



晴哉の口から知らされた原口の言葉に、伊集院は目を見開いて固まり、体が震えそうだった。
ちらりと、横にいる原口を見る。
原口は、顔を真っ赤にして口を抑えていた。

「やらないからな。こいつは、俺の。かわいいって言うのは俺だけでいい」

顔を赤くしながら牽制をかける原口に、伊集院は嬉しくて晴哉の前だというにも関わらず原口に抱きついた。


「忍、やっぱり俺は鳥だ。お前という鳥かごに捕らわれて、幸せで居心地がよくて出られない」
「いいね。一生愛でてあげるよ」



そう言って口づける二人を、あの日のインコのように晴哉が微笑ましげに見ていた。


end
→あとがき

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