×
「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -




4

どれくらいの時間そこに立ち尽くしていたのだろう。気がつくと辺りは真っ暗だった。伊集院はいまだその場から動くことができない。


…忍を、怒らせた…


どうして。なんで。なにが、いけなかったんだろう。
真っ暗な中、飼育小屋をぼうっと見上げる。鳥たちは皆体を寄せ合い静かに眠りについている。
あの、二人を結んでくれたインコを探す。


ああ、あの時はとても幸せだったのに。


俺は、こんなに人を好きになったのは初めてだ。忍が好きで好きで、いつだって忍を独占したい。忍の一番でありたい。なのに、忍にはちっとも伝わらないんじゃないか。忍は自分ほど俺のことを想ってはくれていないんじゃないか。
忍のことになると、余裕なんかないんだ。

「…っ、ふ…」

金網をかしゃんと握りしめ、ぽたぽたと涙を流す。

「…ず、るい…。」

こんなに、好きにさせておいて。
こんなに自分の心を奪っておいて。


「鳥に、なりたい…」


このインコたちのように、無償の愛を与えてほしい。この鳥かごの中で、一生愛でていてほしい。



「それは困るよ」



金網にしがみつき泣き崩れていると、後ろからふわりと抱きしめられる。


「…しのぶ…」
「こんなとこにいたのか…探したんだぞ」


ぎゅう、と原口が伊集院を抱きしめる。走ってきたのだろうか、息がはあはあと乱れ、額から汗がぽたりと落ちている。


「ちゃんと話をしようと思って部屋に行ったけどいないし。生徒会室にも職員室にも、どの教室にもいなくて携帯に掛けても出ないし。あんたの取り巻き達に聞いてもずっと姿を見てないって言うから。
ほんとまじ焦った。心配したよ、無事でよかった…」


心底ほっとしたようにため息をつく原口に、胸がじんと熱くなる。
そんなに、心配してくれたのか…
伊集院は自分を抱きしめる原口の腕にそっと触れた。

[ 243/459 ]

[*prev] [next#]
[mokuji]
[しおりを挟む]


top