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どれくらいの時間そこに立ち尽くしていたのだろう。気がつくと辺りは真っ暗だった。伊集院はいまだその場から動くことができない。
…忍を、怒らせた…
どうして。なんで。なにが、いけなかったんだろう。
真っ暗な中、飼育小屋をぼうっと見上げる。鳥たちは皆体を寄せ合い静かに眠りについている。
あの、二人を結んでくれたインコを探す。
ああ、あの時はとても幸せだったのに。
俺は、こんなに人を好きになったのは初めてだ。忍が好きで好きで、いつだって忍を独占したい。忍の一番でありたい。なのに、忍にはちっとも伝わらないんじゃないか。忍は自分ほど俺のことを想ってはくれていないんじゃないか。
忍のことになると、余裕なんかないんだ。
「…っ、ふ…」
金網をかしゃんと握りしめ、ぽたぽたと涙を流す。
「…ず、るい…。」
こんなに、好きにさせておいて。
こんなに自分の心を奪っておいて。
「鳥に、なりたい…」
このインコたちのように、無償の愛を与えてほしい。この鳥かごの中で、一生愛でていてほしい。
「それは困るよ」
金網にしがみつき泣き崩れていると、後ろからふわりと抱きしめられる。
「…しのぶ…」
「こんなとこにいたのか…探したんだぞ」
ぎゅう、と原口が伊集院を抱きしめる。走ってきたのだろうか、息がはあはあと乱れ、額から汗がぽたりと落ちている。
「ちゃんと話をしようと思って部屋に行ったけどいないし。生徒会室にも職員室にも、どの教室にもいなくて携帯に掛けても出ないし。あんたの取り巻き達に聞いてもずっと姿を見てないって言うから。
ほんとまじ焦った。心配したよ、無事でよかった…」
心底ほっとしたようにため息をつく原口に、胸がじんと熱くなる。
そんなに、心配してくれたのか…
伊集院は自分を抱きしめる原口の腕にそっと触れた。
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