3
次の日、飼育小屋に行くとまた原口は誰かと談笑していた。相手を見た伊集院は、さっと顔色を変えた。
…昨日のやつだ。
そういえば、おそろいの軍手をはめてもらったことですっかり忘れていた。原口は、昨日も同じ奴といたんだ!
楽しげに笑いあう二人を見て、伊集院はぎゅっと唇を噛み締める。二人の所へ行って、話を聞こう。
伊集院が一歩踏み出すと、原口と談笑していた生徒がふいに原口に抱きついた。
ダダダダッ
「あ、伊集院…
…………!!」
ばしん!
伊集院は駆け出して相手の生徒の前に行くと平手打ちをしてしまった。
「何すんだ!大丈夫か?晴哉。」
原口が、相手を呼び捨てにした。
―――――俺様のことは名前で呼ばないくせに!
「はっ、泥棒猫にはぬるいくらいだ!忍、なんでこんなやつかばうんだ!俺様を差し置いて、お前に抱きついたんだぞ!」
かっとなった伊集院は、相手と原口に怒りの目を向ける。
「ちょっと落ち着け!こいつはそんなんじゃないから!な、とりあえず冷静になれよ。そんでいきなり叩くのは悪い。晴哉に謝れ。」
「誰がそんなやつなんかに!お前は俺の恋人じゃないのか!お前と付き合ってるのは俺様だろう!」
「だから違うって言ってるじゃん。聞けよ、伊集院」
「聞きたくない!浮気のいいわけなんか聞かない!」
自分のことより相手を気遣うような原口の発言に、伊集院はますます頭に血が上ってしまった。
そこまで言って、原口の顔色が変わったのに気がつく。
「恋人の話も、ちゃんと聞けねえの?お前の言う恋人って何?」
「あ…」
いつもの、優しい笑顔はそこにはなく。あるのは、以前見た原口の目。
「もういい。行こう、晴哉」
原口は晴哉と言う生徒の肩を抱き、振り返りもせずに伊集院を残しその場を去った。
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