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テレビに、大きくテロップが流れる。


『速報!本郷コーポレーション倒産!』


「な…!うそ!うそよ、どうしてわたくしの会社が…!」


女が叫びながらテレビにかじりつく。誠二はテレビを消し、女に向かい書類を投げつけた。


「いつかこんなこともあるだろうかと、会見場で婚約を発表された瞬間に俺はとある信頼できる人物に緊急メールを送った。ボタン一つで即座に行動を起こし、会社を調べ上げ企業の機密データをハッキング、全てのライバル会社に送信してやった。学生起業家の婚約発表と一部上場企業の倒産。マスコミが食いつくのはどちらかな?」


女が、真っ青な顔で誠二を見る。


「婚約発表で一つ幸いだったのは、俺の婚約発表だと言うことしかその場で知らされなかったこと。きっとお前はこちらの事が全てすんでから会見場に現れ、そこで相手は自分だと明かすつもりだったんだろう。お前の名前を出す前におれの行動が勝ち、倒産が確定したんだ。」


女は、うつろな顔でその場にがくりと崩れ落ちた。誠二は優しく俺の頬を撫で、キスをする。


「…会見場は大混乱。発表した父親は会社の倒産を知りその場を駆け出した。残された俺は、そのまま会見を続けたんだ。愛する人と、婚約をしましたと。一般の方なので名前は明かせませんが、一生添い遂げるつもりですと。」


続けて出た誠二の言葉に、俺は誠二を見つめ言葉を発することができなかった。
誠二は、その後自分の両親に向き直り、とても悲しそうな顔をした。


「…あんたたちが、この女に踊らさたのは残念だ。大方、協力すれば会社を一番の好条件で取引してやるとでも言われたんだろう。あんたらにとっても、俺は手元に戻ってくるし一石二鳥だと思ったんだろうな。
本当に残念だ。愛情はなくとも今まで育ててくれたあんたらを、光彦とは別に大事に思っていたのに…」

誠二が唇を噛み締めて、俯く。誠二の家も会社を経営している。誠二は昔から跡継ぎとしてのみ厳しく育てられ、親からも『お前は道具だ』と言われ育ってきたらしい。
一緒に暮らして、初めて聞いた。
だから俺は、そんな誠二に今までの分も愛情を注ごうと決めたんだ。

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