×
人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -




2

ピンポーン

誠二が出張へ行ったその日の夕方、滅多にならない家のインターホンが鳴った。宅配便だろうか。


「誠二の両親です」


…誠二。俺、いい子で待ってられないかもしれない。


「どうぞ」

突如現れた誠二の両親をリビングに通し、お茶を出し向かい合って座る。こうやって対面するのは二年振りだ。二年前、俺はこの二人に誠二と別れてくれと頼まれ、誠二から離れようと誠二を傷つけた。
あの時、この二人にはひどく罵倒された。この世のクズだとか、生きてる価値ないとか、散々罵られた。
あの時の記憶が甦り、手が震え口がひどく乾く。しかも今回は、二人だけではなかった。


「わたくし、本郷真奈美と申します。誠二さんの、婚約者ですの。」


スーパーでぶつかりかけた、あの人がいた。


「婚約者…ですか」
「ええ、そうですわ。正当な、ね。」

俺を見下し、鼻で笑う。

「誠二が、バカなことを言ってあなたを引き止めたと思うんだけど勘違いしないでほしいの。あの子は私たちの所に帰ってきて、きちんと和解したのよ。こないだから幾度か家を空けたでしょう。あれは全て、この真奈美さんとの婚約の為と今後の結婚の打ち合わせの為なのよ。」

誠二の母親がいう言葉が、どこか知らない国の言葉のようだ。

「誠二が君に何と言ったか知らないがな、君は言わば結婚までの遊びだ。真奈美さんと正式に結婚する前に間違いがあってはいけないだろう?君なら妊娠する心配もないし、格好の性欲処理に使える人間だからな。」

…性欲処理…ほんの少し前まで、俺が本当にその存在だったと思っていた言葉だ。他人に言われると吐き気がする。唇をかみしめ、俯いて拳を握りしめる俺を見て三人が汚いものでも見るかのように鼻で笑う。

「真奈美さんには君の存在を隠していたんだがな、どこからかばれてしまって。それでも真奈美さんは誠二と結婚したいと仰って下さったんだ。ただ、一つ条件があってな」
「条件…ですか」
「ええ。今すぐに、あなたがここを出て誠二さんの前から姿を消すこと。そして二度とそのけがらわしい顔を見せないことですわ。」


俺が聞くと、真奈美という女が赤い唇を歪めてそう言った。

[ 223/459 ]

[*prev] [next#]
[mokuji]
[しおりを挟む]


top