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次の日、園に行くと圭介も保育園に来てた。頭のガーゼが痛々しい。
「圭介、ちょっとこいよ。」
俺は圭介を引っ張って園の隅に連れてきた。圭介が不思議そうに俺を見る。
「…昨日、ごめんな。」
俺はポケットから、俺の宝物のビー玉を出して圭介に差し出した。
「よーちゃん?」
「あの、お詫びっていっちゃなんだけど、その、やるよ。」
圭介は俺の差し出したビー玉をそっと受け取った。
「ありがとぉ。」
へにゃりと笑う圭介に、ほっとする。
「よーちゃん、もう大丈夫?先生と仲直りできた?」
「うん、大丈夫!あのな、お前にだけ言うけど、先生、俺のママになるんだぜ!絶対内緒だぞ!」
俺が言うと、圭介は目を見開いた後、ぼろぼろと泣き出した。
えっ?なんで?
「ひ、どい…!先生とよーちゃんのパパ、ひどいよ!よーちゃん、…ひっく、せんせのこと、好きなんでしょ…?」
…こいつ、気づいてたのか。
俺がかわいそうだとぽろぽろ泣く圭介の頭をそっと撫でる。
「ありがとな、圭介。でもいいんだ。大丈夫!だって、大好きな先生がママになるんだぜ!これからずっと一緒にいれるんだ!それに、ママなら子供の俺が一緒にお風呂入ったり一緒のお布団で寝たり、抱っこだっていっぱいいっぱいしてもらえるしな!」
そうだよ。家にいる間はパパなんか入る隙間ないくらい甘えてやるんだ!それくらいの仕返し許されるよな?だって、先生はパパに譲ってやったんだしな!
俺がそう言うと、圭介はごしごしと涙を拭いて俺の手をぎゅっと握りしめた。
「よーちゃん、待ってて。僕、大きくなったらほいくしさんになる。よーちゃんの大好きな先生になって、僕がよーちゃんのお嫁さんになるよ!だってだって、僕、よーちゃんが好きだもん。先生より、よーちゃんのパパより僕の方がきっときっとよーちゃんのこと大好きだもん!」
圭介の告白に、俺はびっくりして目を見開いた。圭介、やたらと引っ付いてくると思ったらお前俺が好きだったの!?
「だから、待っててね!先生になったら、僕、よーちゃんにこくはくしに行くからね!」
「あ、ああ。」
圭介の迫力に思わず頷いた俺が、本当に保育園の先生になって猛アタックをしてくる圭介にめろめろになっちゃうのは、それから十数年後の話。
end
→あとがき
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