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「洋介っ!!」
先生に手を引かれ家に帰った俺に、パパが手を振り上げた。
――――ぶたれる!
咄嗟にぎゅっと目をつぶると、パパは俺を思い切り抱きしめた。
「心配させやがって…!このバカが…!」
抱きしめるパパが震えてるのがわかる。汗だくで、服もよれよれ。パパ、そんなに必死に俺を探してくれたの。
「パパ…ぁ、ご、めんなさい。ごめんなさい…!ごめんなさい〜!うあああん」
俺はパパに抱きついて、わんわん泣きながら謝り続けた。
「あのさ、パパ。パパは俺の太陽なんだ。んで、先生もパパは太陽なんだって。」
「「えっ!?」」
しばらくしてから、パパは俺と先生を連れて家に入った。散々泣いた俺は、家に入って皆でお茶を飲んでいるときにぽつりと言ってやった。
二人とも目が白黒してる。おもしれー。
「パパ、ごめんね。俺うそついた。先生、つき合ってる人いないよ。先生はね、太陽が大好きなんだって。」
「よ、洋介くん…!」
先生が真っ赤になってわたわたする。
「な、中川先生…」
パパの顔も真っ赤だ。今だヘタレ!言っちゃえ!パパは何かを決心したような顔で、ソファの上で正座をして先生に向き直った。
「…中川礼二郎さん。俺、あなたが好きです。子供たちに向けるあなたの優しさに惚れました!こんな、コブつきの女房に逃げられた情けない男ですが、よかったらお付き合いしてください!」
パパ、ママに逃げられたの!?初めて聞いたよ!びっくりして今度は俺が目を白黒させちゃった。
…まあわからんでもないな。パパ、イケメンで優しいけどちょっとうじうじしてるし、優柔不断だし。気の強い人なら我慢できないかもなあ。
「…ぼ、僕もあなたが好きです…。ぜひよろしくお願いします」
「な、中川さん…!」
真っ赤になって返事した先生を、同じく真っ赤になってパパが抱きしめた。ニヤニヤしながら二人を見てる俺に、パパは先生に見えないようにしっしっと追い払う仕草をした。
はいはい、邪魔者は消えますよ。
「ごゆっくり〜」
いつまでも抱き合う二人をおいて、自分の部屋に戻って少しだけ泣いた。
さよなら、俺の初恋。
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