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5

「洋介くん」

どれくらい時間がたったのだろう。気がつくと辺りは真っ暗。なのに、目の前がまぶしい。
薄目で光の先を見ると、先生がいた。

「よかった、見つかって…大丈夫?怪我とかはない?」

優しく微笑みながら、先生は俺のいるトンネルに入ってきた。

「ふふ、大人にはやっぱりちょっと狭いね。」

そう言って笑う先生に、なんて返せばいいのかわからなくて黙り込む。


「…ごめんね、洋介くん」


先生が、ふいに俺に謝ってきた。


「君の言うとおりなんだ。先生、洋介くんのお父さんが好きなんだ。
…洋介くんには、バレてたんだね。ごめんね。大好きなお父さんを、男の僕に取られそうで嫌だったんだよね。」
「せんせ…」
「…うん、大丈夫。洋介くんのお父さんは、洋介くんが一番大事だよ。今回の事だって、わざとやったわけじゃないってちゃんとわかってる。君は大事なお友達に意味なく暴力をふるう子じゃないもんね。
洋介くん、ほんとにごめんね。もう、先生、お父さんには近づいたりしないから。お父さんと、仲直りしてくれるかな?」


そう言って、泣きそうに微笑む先生に、俺はたまらず抱きついた。


「ちが、ちがう!先生のせいじゃない!俺が、俺が取られたくなかったのは先生なんだ!俺、先生が好きなんだ!パパに、先生を取られたくなかったんだよう!うわああん!」
「洋介くん…」


わんわん泣きながら、先生に抱きつく。どうして。どうして俺じゃだめなの。どうしてパパなの。どうして俺は子供なの。どうして先生は待っててくれないの。
泣きながら、思っていること全てを先生にぶつけた。


「洋介くん、ごめんね…先生、君にひどいことしてたんだね。本当にごめんね…」


先生は、優しく俺の背中をとんとんと叩いてくれた。
あったかい。優しい、優しい先生。お母さんみたいだ。


「せんせ…、どして、パパのこと、好きになったの?」


俺はちょっと落ち着いて、先生に聞いてみた。


「うん、あのね。初めて僕がここに赴任してきてた時、ちょっと上手くいかなくて落ち込んじゃってて。普通にしてたつもりだったんだけど、洋介くんのお迎えにきたパパが僕にあめ玉をくれたんだ。
『やなことは甘く溶かして食べちゃいましょう。大丈夫、明日はきっと晴れますよ。』
そう言って、笑ってくれた。その時の洋介くんのパパの笑顔は、曇ってた僕の心を晴れにしてくれた太陽みたいだったんだ。」


…パパは、いつもそうだ。俺が悲しいとき、嫌なことがあったとき、いつもあめ玉を渡しながら、『大丈夫。明日は晴れるさ。』
と笑ってくれる。パパは、俺の太陽だった。先生も、そう思ったんだね。


「…先生、あのね。俺、うそついた。パパに、先生はつき合ってる人がいるって言ったんだ。パパ、それから太陽じゃなくなっちゃった。」
「えっ?」
「先生だけが、きっとパパをまた太陽にできるんだよ。だから先生、パパに言ってあげて。パパは、先生の太陽だって言ってあげて。」


うん、いいや。パパなら、先生をあげてもいい。だって、パパは俺の太陽だから。先生だけが、パパのことを俺と同じく太陽だと思ってくれた。
二人もの人間から、太陽なんて言われるパパってすごくない?


「先生、ごめんね。うそついてごめんなさい。あんなこと言ってごめんなさい。俺、パパに謝る。一緒に来てくれるよね?
…ママに、なってくれる?」
「よ…すけ、く…」


先生は、ぼろぼろ泣き出して何度も何度も頷いた。

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