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8

目が覚めると、俺はふかふかのベッドに寝ていた。頭は包帯が巻かれている。

きょとりと周りを見回すと、ひとりの男がいるのに気がついた。

「目が覚められましたか。よかったです。」

男は俺に気づくと、近づいて声をかけてきた。

「ここ、どこ…?」
「総長の部屋ですよ。今隣におられます、すぐにお呼びしますね」

そう言って男は部屋を出て行った。
総長の部屋…。なんでそんなとこに俺いんの?
ベッドでぼんやりしてたら、バタバタと駆けてくる音がして扉が勢いよく開かれた。びっくりしてすくみ上がる。

「ひい、目がさめたか!気分はどうだ、他に痛いところはないか?」
「だぁりん…」


なんでだぁりんがこんなとこにいんの?



「お前が倒れたときは気が狂うかと思った…。俺を庇うなんてバカなことしやがって。無茶しちゃだめだろ?」

優しく俺を咎めながら、頬を撫で何度もキスを落とす。

「だぁりん…なんで俺、こんなとこにいんの?総長の部屋ってどこ?なに?だ、だぁりん…、ゆーは、ゆーは誰なの?」


だぁりんは、俺の知ってるだぁりんじゃないの…?


混乱して涙を流す俺を優しく抱きしめ、涙を拭いまたキスをする。


「ごめんな…騙したりしてるつもりはなかったんだ。俺は…」
「あなたの所属するチームの総長ですよ。武山秀幸さん」


さっき部屋にいた男が、コップを持って現れた。

「はじめまして。学園の生徒会副会長で、チームの副総長をつとめております桜井賢治(さくらい けんじ)です。
さ、これをどうぞ。薬が入ってます。」


俺に持ってきたコップを差し出しながら、にこりと微笑んだ。副会長で副総長で、だぁりんは会長で…

「ゆー…、ゆーが総長…?俺のチームの?生徒会役員なのに?」

だぁりんは、黙って頷いた。

「ごゆっくりどうぞ。」

桜井さんが、コップを持って退室する。

「…びっくりしたか?生徒会役員は実は全てチームの幹部だ。」


だぁりんの言葉に目を見開く。だって、生徒会役員って超真面目で頭いい人ばっかで、不良なんかじゃなさそうなのに!


「元々俺たちは結構やんちゃしてたんだ。自分から喧嘩売ったりはしなかったんだけど絡まれて応戦してたら結構有名になって慕ってくる奴らが増えて。
放置してると人に迷惑がかかる。だからそれならいっそチームを作ってルールを守る奴だけを仲間にってしてたら知らない間にこんなにでかいチームになっちまった。」


だぁりんが、ポツポツ話し出す。


「お前と会った日、俺は一人遅れてチームに合流しようとしてた。そしたら、お前を見つけて。チームの奴なら連れて行こうと声をかけたんだけど、お前俺のこと知らなかったろ。」

だぁりんが苦笑いで俺を見る。うん、知らなかった。だってチームに入ったとき、幹部誰もいなくて秋次が後で挨拶に行けよって言ってたけどめんどくさくて行かなかったもん。


「まさかチームに俺のこと知らない奴がいるなんて思わなかったから、びっくりしてからかってやるつもりだったんだ。でも…」


だぁりんが、そっと頬を撫でる。


「まさかファーストキスを奪われたくらいで泣いちまうなんて思わなくて。どんなシチュエーションでキスしたかったか聞いたら、真剣に悩むお前がかわいくて。
…気がついたら、本気で落としにかかってた。」


だぁりんが、俺に軽くキスを落とす。


「付き合ってからはもう会う度会う度かわいくなっていくお前に夢中になった。ほんとは学園でも隠すとか嫌だったんだぜ?チームのことだって、ちゃんと言うつもりだった。でもお前、見た目に反して乙女思考だから。俺のためにって健気に言うお前の意志を汲みたかったんだ。
…ま、ひいはその状況にちょっときゅんきゅんしてたみたいだけど?」


だぁりんが俺を見てちょっと意地悪に笑う。
うう、そうですごめんなさい。
でもでも、きゅんきゅんしたいために隠そうって言ったんじゃないんだよ?


「わかってる。わかってるよ。ひいはほんとに一途でかわいい。
さっきだって、俺のために必死に貞操を守ろうとしてくれたもんな。」


ちゅ、とおでこにキスして、ゆっくり俺に覆い被さる。俺の顔の横に手をついて、上から優しく俺を見下ろす。


だぁりん、かっこいい…。きゅんきゅんするよう。

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