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『カリスマ会長、伊集院崇落ちる! お相手は無口でクールな飼育委員!』
この一大スクープは、学園中にすぐさま広がった。というのも、原口への気持ちを自覚した伊集院が、ところかまわず原口について回り、隙あらば抱きついてキスをするためだ。
今日も伊集院は、原口と共に飼育小屋を掃除している。その様子を、伊集院の取り巻きたちが飼育小屋の外から唖然と見守る。このメンバーは、以前教室で原口の悪口を言っていたメンバーだ。
「まさか伊集院さまが、あんな平凡に落ちるなんて…」
「しかもネコ。信じらんない。見てよ、あの溶けきったしまりのない顔!」
原口といるとき、伊集院は常にふにゃふにゃと笑っている。まさに、こんなに幸せでいいのかしら私。という女優のようだ。
そこに、以前の俺様何様生徒会長様な傲慢で尊大な伊集院の影はまったくない。あまりの変わりように皆開いた口が塞がらない。
「くそ、俺も抱いてみてえなあ。
伊集院〜、いっぺん俺とヤってみない?俺、結構いいもん持ってるしテクもあるよ〜?」
取り巻きの同級生の1人が、からかうように伊集院にお誘いをかける。
ギロリ。
「うっ…」
伊集院の睨みに、からかった生徒が固まる。
伊集院がその俺様な態度を軟化させるのは、あくまで原口限定。
普段の伊集院は、絶大なカリスマ性を持ち何人も近寄らせない圧倒的なオーラを持つ俺様何様生徒会長様なのだ。
「ばかめ。俺様が抱かれるのは、原口だからだ。好きな人に抱かれるからこそ幸せなんだ。貴様なんぞにヤられるくらいなら、自害する。気持ちが悪い、二度とぬかすな。」
「す、すみません…」
からかった生徒は小さくなって謝罪した。
「…すごいな、会長。ほんとに好きなんだ…」
「ん…、なんか本当に幸せそう。うらやましい…」
伊集院の言葉に、他の取り巻きたちの顔がゆるむ。
「それにな、テクニックなら原口もなかなかだと思うぞ。なんせ泣かされない時はないからな。
それに、モノだって俺様よりデカいんだ。いつもお腹いっぱいになって苦しいんだぞ。」
続いて出た伊集院のまさかの話に、取り巻き皆目を丸くする。
「あんた何言っちゃってんの…」
黙ってやり取りを聞いていた原口が、ため息をついて片手で顔を覆う。
「本当の事を言ってなにが悪い」
伊集院は胸を張ってふんぞり返る。
「きょ、巨根なの…!?ちょっと試してみたい…」
「泣かされない時はないって、どんな…!?」
「…うわ、俺もちょっと抱かれてみたいかも」
「…あのクールな顔、エッチの時どんな顔になるんだろ…」
取り巻きたちが口々に原口への興味を口にする。
「だ、だめだからな!原口は俺様のだ!!」
伊集院が焦って皆から隠すように原口に抱きつき、必死に牽制する。
「伊集院」
「はらぐ…、んっ…」
名を呼ばれ、振り向いた伊集院にキスをする。
「あんまかわいいことばっか言わないでよね。かわいすぎて困るからさ」
にこりと笑う原口に、伊集院は真っ赤になってますます強く抱きついた。
二人の携帯には、原口が本当はお揃いが持ちたくて渡したあのインコのストラップ。
二人の上の止まり木で、インコも幸せそうに鳴いていた。
end
→あとがき
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