8
しばらく唇を重ねた後、ゆっくりと離れる。
原口は、まだ伊集院の後頭部に手を置いたままだ。二人の距離は、鼻先。伊集院は、何が起きたのかわからず目をうろうろとさ迷わせた。
「俺、さっき傷ついたって言ったでしょ?」
原口の言葉に、伊集院がさ迷わせていた目を俯かせ唇を噛む。
「でも、いいやって思っちゃったんだ。あんたになら、傷つけられてもいいやって。
…そんくらい、俺もあんたが好きなんだよね」
俯いていた伊集院が、目を見開き顔を原口に向ける。
「だから、ずるいよ。こんなかわいいとこ見せられたら、もうこなくていいなんて意地張ってられなくなっちゃった」
にこりと笑い、ちゅっ、と伊集院に軽くキスをした。
「あんたが好きだ、伊集院。あんたは?」
「…っ!好きだ!原口、好きだ!」
微笑みながら言う原口に、伊集院はぼろぼろ泣きながら飛びついた。
「ちょ、伊集院、…っん、まて、わかったから、んっ、落ち着けって!」
伊集院は、飛びついたあと、原口にぎゅうぎゅう抱きつきながら何度も何度もキスをする。
原口はそんな伊集院を必死になだめている。
「だ、だめか?」
原口に言われ、一旦キスをやめ、しゅんとして原口を見つめる。
その姿からは、あのいつもの高飛車で傲慢な伊集院は想像もつかない。
「いや、だめじゃないけどさ。ちょっと確認。
…そんなかわいいとこばっか見せるってことはさ、俺が上でいいんだよね?」
「…!」
ニヤリと笑う原口に、伊集院は真っ赤になる。
「は、原口がそうしたいならいい。けど、初めてだから、優しくしてほしい…」
真っ赤になってそう言う伊集院に、今度は原口が真っ赤になった。
「ああもう、参りました!」
伊集院をきつく抱きしめ、今度は原口からキスをした。
インコが2人をじっと見て、一声ピルル、と鳴いた。
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