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4

伊集院は、朝から何度もストラップをこっそり眺めてはニヤニヤしていた。


「伊集院さま、最近よく飼育小屋に行かれてますね。どうしたんですか?」


突然、自分の周りにいた1人の取り巻きに言われびくりとした。


「い、いや、別に…」


まさか、原口目当てに行っているなんて間違っても口にはだせない。伊集院はゴニョゴニョと口ごもってしまった。


「あそこってさ、平凡な飼育委員一人でいつも掃除してるんだろ?」


周りにいた伊集院の友人の一人が言う。


「あ、知ってます。インコしか友達いないんですかね?ふふっ、気持ち悪い。ね、伊集院さま。」
「えー?じゃあ毎日そこに行くって、伊集院かわいそうな平凡くんに興味あるの?」

「はっ、んなわけないだろうが。いつも1人でいるからかわいそうに思ってな、ボランティアだ、ボランティア。」

口々に言われ、伊集院は完全にパニックになってしまい思わず口にした。言いながら、震える手で握りしめているストラップをこっそりポケットに直そうとして、落としてしまった。

「あれ、なんか落ちたよ。」


――――――しまった!


「インコのストラップ…?伊集院さま、これ…」
「ま、毎日話しかけに行ってやったら、礼のつもりか渡してきたんだ。」
「えー!ストラップまでインコって、どんだけ!」
「きもーい!伊集院さま、こんなの捨てた方がいいですよ!」
「そ、そうだな」
「じゃあ、ぽーい!」


げらげらと笑いながら、取り巻きの1人が教室のゴミ箱にストラップを投げた。


「あ…!」


取り巻きの1人が、廊下を見て一瞬ちょっと気まずそうな顔をした。
伊集院も何事かと振り返る。



「…!!」


原口が、立ち止まってこちらを見ていた。


距離から言って、全て聞こえているだろう。

いつから。

伊集院の心臓はばくばくと脈打ち、手にはじっとりと汗をかいていた。


原口は目が合うと、軽く会釈してそのまま去っていった。



「なにあれ」
「文句言う根性もないんじゃない?」


げらげらと笑う取り巻きたちの声が遠く聞こえた。

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