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3

その日から、伊集院は毎日飼育小屋に原口を訪ねていくようになった。
自分でも理由はよくわからない。だが、原口はいつも伊集院を無視はしないが学園の皆のようには媚びてこない。


伊集院の心の中はむかむかと意味の分からない苛立ちに占領された。


…俺様を適当に扱うなんて、許さない。そうだ、あの平凡を惚れさせてやろう。俺に笑顔を向けるようになったら、こっぴどく振ってやろう。


そんなことを考えながら、いつもの無表情な原口を思い出した。


「…あんた毎日ここにきてなんか楽しいんすか?」

今日もいつものように飼育小屋へと向かうと、原口が聞いてきた。


「ああ、おまえがいるからな。」


伊集院の答えに、原口はちょっと目を大きくした。
はっ、どうだ。ちょっとグラッときただろう。


伊集院は心の中でほくそ笑んだ。


「物好きだね。じゃあはい」


そう言って原口は、一匹のインコを伊集院の手に乗せた。

「!」
「あんたが前に助けてくれたインコです。こいつが一番俺に懐いてくれてんだよね。」
「助けたわけじゃ…ただそこにいたから捕まえただけだ」
「うん、あんたはそうでもあの時捕まえてもらわなかったらきっと死んじゃってたと思うんだ。だから、ありがとう。」
「…」


伊集院は、原口の言葉になんと返していいかわからなかった。
手の中で、大人しく膨らんで座っているインコ。

「…かわいいな」
「インコ好き?」

思わずぽつりと本音を漏らすと、原口が聞いてきた。


「今好きになった」
「…っはは!なんだそれ!あははっ!」


伊集院の言葉を聞いて、原口が声を上げて笑った。伊集院は目を見開き固まってしまった。


…はじめて、笑った。


じわじわと、甘酸っぱいようなくすぐったいような感覚が体を駆け巡る。
「じゃあこれやるよ。」

そう言って原口がポケットから取り出したのは、小さなインコのついたストラップ。


「こいつと同じのが欲しくて何回かガチャガチャやったら、色違いが出てきたんだよね。
あ、こんなんはいらないかな。」
「!い、いる!…も、もらってやる。」


ストラップを引っ込めようとした原口から、慌てて奪い取る。


「…くくっ、あんた、おもろいよな」


また笑った原口を見て、伊集院は自分の顔が赤くなるのがわかった。


心臓が、早鐘のようだ。


…なんか病気だろうか。


手の中のインコと、ストラップをじっと見る。


…嬉しいのはインコがかわいいせいだ。きっとそうだ。
伊集院は自分の中で確実に生まれた気持ちに、無理やりそう言い聞かせた。

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