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そこで、飼育小屋を掃除し一生懸命生き物の世話をする原口を見つけた。
あの平凡は…
思わず影からじっと見る。原口は水を換えたり床を掃いたり、餌を足したり忙しそうに動いていた。そんな原口の肩に、一匹のインコがとまった。
「お、なんだお前。いつも肩に来てくれるな。はは、俺のこと気に入ってくれてんのか?」
そう言ってインコに優しく微笑む。そんな原口の頭に、もう一匹。反対の肩にもう一匹。
「はは、一休みしろってことか?ありがとなー」
インコたちと楽しそうに戯れる原口に、伊集院は目を離せなかった。
しばらくして飼育小屋に近寄る。原口はインコに夢中で伊集院の存在に気付かない。
…なんだこいつ!インコを使って俺に近づこうとしたくせに、俺に気付かないなんて何様だ!
「おい、平凡」
伊集院が声をかけると、驚いて原口は振り返った。バタバタとインコたちが一斉に原口から飛びさる。
「ああ、どうも」
伊集院の姿を認めると、原口は途端に無表情になりぶっきらぼうに挨拶をした。
伊集院はそれにまたイラついた。
「なんだ、インコしか友達がいないのか?寂しい奴だな」
ばかにして笑う。
「はあ、まあそうっすね。なんか用すか?」
こちらを見ようともせずに掃除を再開する原口に、イライラが募っていく。
「はっ、誰がお前みたいな平凡に用事なんかあるか。たまたま通りかかったらインコ相手に話しかけてる奴がいるから誰かと思って来てみたらお前だっただけだ」
「ああ、そうっすか。じゃ。」
掃除を終わらせ、伊集院に軽く挨拶をして原口はその場を去った。
なんだ、せっかく俺様が声をかけてやったのに。…インコにしたみたいに、笑って返事くらいできないのか。
残された伊集院は、原口の態度に余計にイライラが募っていった。
それから伊集院は、学内で原口を見つけるたび知らず目で追うようになっていた。伊集院が見かけるとき、原口は大概1人だった。
はっ、友達が誰もいないのか。寂しい奴だ
ある日、原口を再び廊下で見かけた。また1人。伊集院はいつも1人な原口を哀れに思い、声をかけてやろうとニヤニヤしながら近づいた。
「おーい!忍!」
バタバタと後ろから自分を追い越し、原口に抱きついた生徒がいた。伊集院は突然目の前で起きた出来事に、目を丸くする。
「もー、お前なんでいつも1人で先行っちゃうの!みんな探してたぜ!」
「ああ、悪い悪い。先に行って用意すませとこうと思ってな。」
「手伝うって!」
わあわあと騒がしく戯れながら廊下の先に消えていく二人を唖然と見送り、伊集院は1人その場に佇んでいた。
「…友達、いたのか。…友達となら、あんな風に話すのか。」
伊集院は1人、ポツリとつぶやいた。
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