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12

「山下さん、僕でいいの?僕、こんな見た目だし、気持ち悪くないの?」

震えながら言う僕の顔を、山下さんが両手で挟み目を合わせる。
きらきら、きらきら。金色の目が涙で光る。


「…見た目なんか関係ない。お前が好きだ、ヤマト。俺のもんになれ。」
「…はい」


泣きながら頷く僕に、山下さんがキスをした。


それから、工場を後にした僕たちを、家の前で仁王立ちして背中に般若を背負う鞠ちゃんが待ちかまえていた。


「や〜ま〜し〜た〜!」
「ま、鞠ちゃん、待って!山下さんは悪くないよ、ぼ、僕を助けてくれたんだよ!」


慌てて、山下さんを庇う。山下さんは笑って僕の肩を抱き寄せた。


「すまねえな、約束は守れそうもねえ。ヤマトの全部俺がもらう。その代わり、死ぬ気で守る。許してくれ。」


頭を下げる山下さんの言葉に、鞠ちゃんが目を見開く。


「…乙女ちゃんはどうなの?」


僕?僕の気持ちは、初めから決まってる。


「…山下さんが、すき。」


顔を赤くして、それでも真っ直ぐに鞠ちゃんを見ながらきっぱりと宣言する。そんな僕に、鞠ちゃんが優しく微笑んだ。


「大事にしてもらうのよ、乙女ちゃん。泣かされたら言いなさい。女子全員で箒でボッコボコにしてやるから。」
「ベッドで泣かしてもか?」


山下さんの言葉に僕は真っ赤になる。べ、ベッドで泣かすってなに!?


「このくそ狼!」


ニヤリと笑いそう言う山下さんを、鞠ちゃんが蹴り上げた。
鞠ちゃん、女の子なのにだめだよ。



「よう高原、うまいケーキがあるんだぜ。俺の家に来いよ。」
「失せろクズが!」

あれから、街で歩いているとちょくちょく市原さんが話しかけてくるようになった。そのたびに山下さんは市原さんと取っ組み合いの喧嘩をしてる。仲がいいんだなあ。


「ヤマトさぁん、俺たち怪我したんすよぉ〜」
「手当てしてくださいよぉ〜」


それから、市原さんだけじゃなくてあの時工場にいたメンバーたちもよく声を掛けてくる。僕が怪我させちゃったのに、仲良くしてくれるなんて嬉しいな。
だから僕はにっこり笑ってカバンから絆創膏を出そうとするんだけど、


「ヤマト、俺の手当が先だろ?」
「っ!やん、」

いつもそう言って、山下さんが僕の手を握り締めてその手にキスをして指を軽く舐めるから、思わず変な声がでて僕は真っ赤になって俯いてしまう。
そんな僕を見てみんな何故か前屈みになるんだけど。おなか痛いのかな。


「ヤマトは、俺だけの乙女でいればいいんだよ。」


優しく手にキスをしながら微笑みかける山下さんに、真っ赤になって下を向く。ぼく、僕山下さんに言ってないことがある。

くいくいと、山下さんの袖を引っ張り「ん?」と顔を近づけてくれた山下さんにそっと耳打ちをする。


「あのね、僕、山下さんが初恋なの。
…初恋ってかなわないって聞いたことあるけど、嘘だったんだね。山下さん、僕を選んでくれてありがとう」
「…っ!」

言い終わった後、山下さんを見ると口を抑えていた。


…あ、真っ赤だ。


「…チッ」


山下さんは、舌打ちした後、僕の顔を両手で掴んで噛みつくようにキスをした。


市原さんたちの前だったから、また山下さんと市原さんがなんでか大喧嘩を始めちゃったのは、言うまでもない。


end
→あとがき

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