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9

泣きながら、そっと消毒液で血の出ているところを拭く。山下さんは、手当ての間中僕をじっと見つめていた。


手当てが終わって、離れようと立ち上がった僕の手を山下さんが掴んだ。


「高原、待ってくれ。」
「…かばんに、直さないと…」


そう言って手を離そうとしたとたん、山下さんは僕を引き寄せぎゅっと抱きしめた。


「…!」
「…行くな。ここにいろ。…いてくれ。頼む。」

抱きしめて僕の肩に顔をうずめて、震えながら懇願する。

…山下さんも、ほんとは怖かったのかな。


そんな僕たちを見ていた市原さんが、チッ、と舌打ちをした。


「…行くぞ、お前ら。」


仲間にそう声をかけ、工場を出て行こうとする。みながぞろぞろと出て行った後、最後に残った市原さんが僕の目の前に立った。僕は山下さんからそっと離れ、立ち上がる。山下さんは僕の手を握りしめて離さないんだけど。


「…てめえをチームに入れるのはやめだ。本性がこんな泣き虫じゃ、チームの沽券に関わるからな。今後一切てめえにゃ絡まねえようチームの奴らにも言っとく。」
「…」


市原さんが僕を鼻で笑う。


「…チームに入れるのはやめたが、俺のもんにすることに決めた。高原、覚悟しとけ。」
「…!」


そう言って、僕の頬に手をやると口の横にキスをした。


「市原、てめえ!!」


途端に山下さんが立ち上がり市原さんに殴りかかる。
「おっと」
市原さんは笑いながら軽くよけ、出口に向かった。


「ここは譲ってやるんだ、代わりの代金くらいもらったっていいだろうが。
…手付け金だがな。山下、今日譲るのは場所だけだからな。高原、またな。」
「またはねえよ、一生な!
…ぜってえ譲らねえ。」


市原さんが笑いながら出て行った後、山下さんはまた僕を抱きしめた。

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