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一人、また一人と確実に倒していく。強い。桁外れに強い。でも、後から後から人が襲いかかる。何人いるかもわからない。
「ははっ、いくらてめえが強くても赤虎を全員相手にできるかぁ?
高原、待ってろよ。すぐに山下をぶっ殺して、銀狼を潰してやる。そしたらてめえも迷うことなくここに来れるだろうが」
ニヤリと笑い僕に話しかける。そんな。山下さんが、やられちゃうなんて。
「ぐっ!」
後ろから蹴られて、山下さんが前のめりにバランスを崩す。
「オラア、山下!死にやがれ!」
「くらえ、てめえ!」
今がチャンスとばかりに次々と山下さんに殴りかかる人たち。
やめて、やめてやめてやめて!
山下さん、山下さんが死んじゃう!
「う、うわあああああ!!!」
雄叫びと共に立ち上がった僕は、括られた腕の縄を一気に引きちぎった。
「!た、高原!っぎゃあ!」
「ぐわあ!」
「ひいいい!」
「うおおおお!」
そのまま僕は山下さんを囲んでいる人たちの所へ突進し、無我夢中で腕を振り回した。
しばらくしてはっと我に返ると、僕、山下さん、市原さん以外の人は全て床に転がっていた。
「高原…」
「高原、てめえ!」
「う…っ、うわああああん!!」
山下さんと市原さんが声をかけると同時に、僕は我慢していた涙が一気にあふれわんわんとしゃがみ込んで泣き出してしまった。
「高原…」
「た、高原?」
山下さんと、特に市原さんがおろおろとあわて始める。床に転がっている人たちも、僕の突然の号泣に目を見開いて唖然としている。
「ひっく、どうして、どうして殴り合ったりするの?こんなに、こんなに痛いのに!どうしてこんな痛いことするの?
僕、人を殴ったりするのやだよ。殴られたりするのもやだよ!痛いよ、殴っても殴られても痛いよ!殴られたとこじゃない、ひっく、ひっ…、
―――心が痛いよう!
うわああああん!!わああん!!」
みなが呆然と僕を見つめていた。僕は泣きながらよろよろと自分の鞄に向かい、中から消毒液と絆創膏を取り出した。いつも絡まれて怪我をするから、沢山常備してるんだ。
えぐえぐと泣きながら、震える手で倒れている一人一人を手当てしていく。
すべての人の手当てが終わり、最後に山下さんのところに向かった。
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