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3

その次の日曜日、僕は一人で公園のベンチで日向ぼっこしながら家庭科の宿題のハンカチ刺繍をしてた。
公園は日曜日、子供が一杯だからいつもの怖いお兄さんたちはいないんだよね。
あんまりいい天気だったから外に出てきたんだけど、ぽかぽかして気持ちよくなっていつの間にかウトウトと眠ってしまった。


ふと目が覚めると、僕の横に小さな箱が置いてあった。箱の下に、なにかメモ用紙が挟んである。僕はメモ用紙を手に取った。


『笑顔の素敵なあなたへ。食べてください。』


…僕のことだろうか。次いで、箱のふたを開けてみる。


「いちごのモンブラン…」


こないだ、僕が食べたかったあのお店の一番人気商品だ。
僕にくれたんだろうか。すごく不思議で周りを見回したけど誰もいなかった。


「…ありがとう」


僕はケーキをくれた誰かにお礼を言って、大事に大事にケーキの入った箱を抱えて家に帰った。


家に帰ると、鞠ちゃんが「遊びに来たわよ。」と言いながら宿題の刺繍ハンカチを差し出してきた。出来ないんだね。


僕はちくちく刺繍しながら鞠ちゃんに今日のケーキの話をした。


「ふーん。よかったじゃない。きっと乙女ちゃんに喜んで欲しかったのよ、その人。」


あれ、いつもならもっと『だめじゃない、そんな何か仕込まれてるかも知れないもの持って帰って来ちゃ!』
とか言ってぷりぷり怒るのに。

「嬉しかったんでしょ?ありがたくいただきなさいよ」
「うん、そうする。」


鞠ちゃんに言われて、僕は笑顔でその夜もらったケーキを食べた。
お店で食べるよりおいしく感じたのは、気のせいかな。


それから、不思議なことに僕が公園で日向ぼっこをしてウトウトすると、必ずケーキが横に置かれるようになった。箱の下には、いつものメモ書き。ケーキはいつも違うケーキで、僕は公園に行くのがすごく楽しみになった。
とはいえ、公園には怖いお兄さんたちがいることが多いので、頻繁には行けないけど。


ある日、僕はどうしてもお礼がしたくなってクッキーを焼いて箱に入れて横に置いた。箱の下には、僕からのメモ。

『いつもおいしいケーキをありがとう。よかったらもらってください。』

その日、ドキドキしながらいつものように日向ぼっこしてまたウトウトとすると、ほんの一瞬。唇に柔らかいものが触れた気がした。


目が覚めるとやっぱり誰もいなくて、あれはなんだったんだろうと指で唇をそっと触った。

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