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「久しぶりやな、みんな。元気やったか?」
ソファにくつろぎ、みんなに優しく微笑みながら挨拶をするのはこの学園の風紀委員長、大和晃(やまと あきら)。我らが母上花形纏(はながた まとい)の旦那様。大阪の老舗の料亭の跡取りで、修行のため学園を休学していたのだ。纏が風邪で倒れたときに颯爽と現れ、その懐のでかさと大きな愛に大好きなお母様を任せようと、子供たちである元王道&信者たちがお父様と認めた人物だ。
纏は嬉しそうに先ほど晃の持ってきた花束を花瓶に移し替えている。
「ようやく修行が終わったんや。今日から復学や、よろしくな。」
「そ、そうなのか!」
「よかったな!纏、喜ぶぜ!」
「ありがとう」
子どもたちは父の帰宅に、口々に喜びを表した。晃は微笑み、ソファから立ち上がり花瓶をテーブルに飾る纏の傍へ寄った。
そして、優しく後ろから腰に手を回し抱きしめる。
「纏…待たせてすまん。今日からはずっと一緒や」
「晃…お帰りなさい…」
晃は、うっすら涙を浮かべて見上げる纏に触れるだけの優しいキスをした。
それをみた子どもたちは、なんだかもやもやとした。
次の日。大好きな纏母様と登校しようと部屋にみなが出向く。
「晃、ほらトースト焼けたよ。コーヒーは砂糖一つとミルクたっぷりだよね?」
「ふあ…すまんな纏」
「晃、はいハンカチ。」
そこにはかいがいしく晃の世話を焼く纏の姿があった。
「宝、早く食べちゃわないと遅刻するよ。あ、晃、ネクタイ曲がってるよ。」
宝は何だかしゅんとして朝ご飯を食べている。
「「「纏…」」」
生徒会長たちが纏に声をかけ近づく。
「あ、おはようみんな。宝、ご飯食べたらみんなと先に行ってくれる?晃と職員室に行かなきゃいけないから」
「…」
生徒会長たちはショックを受けた。いつもなら、自分たちのネクタイだって曲がってるとすぐに気付いて直してくれるのに。
嬉しそうに晃のネクタイを直す纏を見て、みんなとても悲しくなった。
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