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「なんだよ、もっと楽しそうにしろよなー」
伊藤はいかにもつまらなさそうな顔をする連矢に不満げだ。
「ほっとけ。」
対する連矢は、不機嫌を隠すこともなく返す。元々町にでるのが好きではない。
…いつもなら、幹司が隣にいるのに。
『連矢さん、連矢さん!クレープ食べましょうよー!』
にこにこと太陽のような笑顔を思い出し眉間にシワを寄せる。
連矢は、自分から愛情をあまり示すことがない。恥ずかしさが勝って、いつも冷たい態度でしか返事を返せない。幹司は、いつもそんな連矢ににこにこと笑いながら『連矢さんの気持ちはわかってますから!』と抱きしめてくるのだ。
「…もしかしたら、やっぱり嫌になったのかもな」
一人、ため息をついてぽつりとこぼした。
「おい、連矢。あれ、佐藤じゃね?」
伊藤に肩をたたかれ、指さす方向に顔を向ける。
そこには、かわいい男の子に腕を組まれ信号を渡りこちらに歩いてくる幹司がいた。
「あっ!」
ふいに前を向いた幹司が、連矢をみとめて驚いた声を出す。
「なあに?幹ちゃん、どうしたの?」
腕を組んでいた男の子が、幹司の服をくいくいと引っ張って顔を近づけた。
連矢は、黙って踵を返す。
「待って!連矢さん、待ってください!」
幹司の必死な声にも振り向くことなく、連矢はその場を走り去った。
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